退職に伴う諸手続~企業・雇い主の視点から~




 

こんにちは弁護士の田代です。今回の動画では退職に伴う手続きについて、少し細かい内容をご説明いたします。

退職自体というよりも、従業員の退職にあたって、企業が諸々どういう手続きを忘れてはいけないのかという点について、主に企業・雇い主の視点からの解説になります。

ちなみに退職自体については、「退職~やり方と注意点」といった動画でも解説しております。

こちらは従業員の視点になります。いずれにしても企業側の方もこの動画を見ていただくと参考になりますし、また従業員の方も退職の時にこういった手続きがいるんだ、あるいは企業に求めないといけないんだ、ということを頭に入れておくことはとても大切です。

今回の動画、従業員の方もよかったら是非ご覧ください。ためになると思います。

退職のNG行動

本題に入る前に、企業側が退職の時にとってはいけない行動です。これは前提知識ですので簡単に解説します。

1 退職を認めない

まず、退職を認めない。退職をさせてくれと退職届が出たのに、「いやいやだめだ」、あるいは「引き継ぎが終わるまではだめだ」、「あと半年は残れ」。これは認められません。意外とこれをする企業って多いものです。ご注意ください。こういうことをすると、従業員の方は、もうある日突然いなくなってしまうので、連絡も取れなくなる。こうなると最悪です。なので退職を認めない、これはしないようにご注意ください。

2 退職を強要する

もう一つが、退職を強要する。これもいけない。わかりやすいですね。とはいえ、退職してくれよとお願いすることは法律上は基本許されるんですよね。何がダメなのかというと、一方的に「解雇だ」というのは、よっぽどのことがないとできないという当たり前の話ですが、従業員の方が退職する気はないんだ、もうその話はするな、と言っているのになおその話をするとなると、損害賠償義務を負うことが企業はございます。ご注意ください。

3 あいまいな退職処理をする

あいまいな退職処理をする。これにも問題がございます。先ほどの退職を認めないケースの時に、従業員に連絡がつかなくなってしまう。これもひとつのあいまいな退職処理の例ですね。あと従業員と話がついてるけれども、書面とかそういったものにきちんと退職の日を残さない。あるいは退職従業員側のサインをちゃんともらっていない。
こういう時には後で退職ではなくて解雇されたんだ、というような争いになったりだとか、あるいはまだ退職じゃなくて企業に在籍してるんだ、だから給料払ってくださいよ、と後で言われたりだとか、こういうリスクもございます。

そこであいまいな退職処理にならないためには、最低限、退職届を受領する。大切なことです。その中で退職時期ですね。「この日をもって退職します。」本日でもいいですけれども、その日じゃなくてもいいんですよね。例えば半年後に退職しますとかでも結構です。ただ半年後といってもちゃんと何年何月何日をもって退職しますと、退職の時期を確定する。これは大切です。
ちなみに退職の理由を確定する必要はあるのかというと、書けるのであれば自己都合・会社都合ぐらいは決めてもいいのかなと思いますが、法律上は必ずはいらないということです。

なので法律上最低限必要なこととしては、 どの会社宛のもので、いつ付で退職するのか、退職届を作った日、あと従業員の方に住所と氏名を書いてもらって、印鑑を押してもらいましょう。これぐらいの内容というのが最低限必要な退職届になります。あとこれに、「一身上の都合」ということが入ったりとか、「会社都合により」というのが入ったりすることもございます。

ただこの自己都合か会社都合か。これは結構従業員の方にとっては、会社都合の方が何かとメリットがあることもあるので、そういうことを求められることもございますが、会社側にとって、例えば助成金などを受け取っている時、会社都合での退職を従業員にさせてしまうと助成金を受けられなくなるということもございます。なのでこの自己都合・会社都合というところは必ずしもバタバタと取り決めないというのも一つかなと思います。

退職届の受領後の手続

これから本題に入ります。
退職届を受領することが大事。その後の手続き、これが本題です。退職届を受け取る、そして退職してもらう。それが退職の本体ですが、その中で諸々の手続き、やるべき事がございます。ざっというと、1番から5番ぐらいかなと経験上思いますので、まず順番に見ていきましょう。

1 業務の引継ぎ

まず業務の引継ぎ。従業員の方が辞めることになって、その方がされている業務を会社としては把握しておいて、他の人に任せないといけない。あるいは社長自身がされることもあるでしょう。そういったことで、他の職員に業務の内容を共有する。この日までにここに連絡をしないといけません。そういったことは必ずあると思います。

さらに、取引先への連絡ですよね。「担当者のこの人は何月何日で退職になりますので、今後は後任の誰々が担当となります。よろしくお願いします。」といった取引先への連絡が必要になります。

ただこの引き継ぎを法的に従業員に請求できるのか。ここは問題がございまして、結論としては「難しい」です。なので、従業員が引き継ぎをしない、あるいは引き継ぎをせずに連絡がつかなくなりましたら、会社はもちろん従業員を無理やり引っ張ってきて「引継ぎは何をするんだ教えろ」というふうに迫ることはできませんし、あるいはそれ以外は、損害賠償請求ですね。これは一概に言えませんが、ただ基本的には難しい。とてもハードルが高いです。なので結局のところ、引き継ぎについては従業員とよく話し合ってやってもらう、協力してもらうということが大切になります。なので退職の時の従業員との話し合いは、会社としても誠意を持ってしっかりと協議してください。

2 物品の回収・返却

次は2番目。物品の回収と返却について。

① 鍵・車・携帯電話・ノートパソコン・健康保険証・社員証・制服などの回収

まず物品の回収について。これは分かりやすいんですが、よくあるのが鍵。事務所の鍵、支店の鍵、あるいは車の鍵といった鍵。営業車などの車自体。
あと携帯電話・スマートフォン、さらにノートパソコン。さらにこの他に健康保険証だったり社員証だったりとか、あるいは事務職の方とかについては制服など、こういったものを回収しないといけない。これも従業員と連絡がつかなくなってしまう、要するに辞めたあと日が経つとこれができなくなるんですよね。それはもうやり取りがなくなった会社から連絡が入っても、電話を取ってもらえるかどうかわかりません。
なのでこれも退職届を出す出さないのやり取りのとき、あるいはその後など、従業員と話が出来ているうちにきちっとやっておく必要がございます。

② 私物・年金手帳などの返却

あと忘れがちなのが、逆に会社からの返却ですよね。従業員の私物などが置いてあったり、そういった時にそれを返却しないといけない。これも意外と残っていると困るんですよね。捨てていいのか、連絡がつかないと、法律上捨てたらまずいです。だけれどこのまま置いていてもどうしようもないということで割と困ってしまうことがございます。ですので、 こういったものの返却は忘れずに行なってください。あと年金手帳。こういったものも会社が預かっていることが多いですのでしっかり返却しましょう。

③ 源泉徴収票・雇用保険証などの交付

さらに返却とは違いますが、後々従業員の方は源泉徴収票が必要になる。転職されたら必要になるんですよね。なので必ず後々言われたりします。あと雇用保険証も返却する必要がございますので、こういったものについても忘れずに従業員にお渡しください。

3 有給休暇の処理

3番目、有給休暇の処理。使用者にとってはちょっと嫌なテーマかと思います。

① 労働者の申出があれば応じる義務

辞めるにあたって、「有給休暇が残っているでしょう」と従業員から聞かれて、「残っている分は使ったうえで退職します」。こういう話が出た時には、企業はそれに応じる義務がございます。今の法制度だと、有給を買い取るという義務はございませんが、有給を使ったうえで辞めるという時には、そういう形で処理をする必要がございます。

② 年5日の付与義務

申出がなければ企業から積極的に使ってもらうという必要は、過去にはなかったんですよね。ただ多くの企業が忘れがちなんですが、年5日間の付与義務というのがございまして、これは従業員が中途退職する場合にも、その年5日間付与してなければ付与する必要がございます。なので結局は5日間の有給の話をすれば、残りの分も使いますという話になりますので、基本的には有給は使ってもらう。それは仕方がないというふうに考えておかれた方が良いんじゃないかなと思います。

4 失業給付などの手続

4番目。失業給付などの手続きです。

① 失業給付(雇用保険)の受給

これもよくある話で、従業員が辞めた後に、今度は雇用保険の中での失業給付ですよね。新しい仕事が見つかるまでは今後これを受給していきたいという時には、会社としてはまず離職票を提出する。従業員にお渡しする必要がございます。

② 傷病手当金の継続受給

あともう一つ、これも時々あるんですが、従業員の方が退職の前の状態から企業で働けていないという方ですね。精神疾患とかうつ病とかの方もいらっしゃいますし、何かしら病気だとかいうことですね。そういった方もいらっしゃると思います。こういった時には健康保険の制度で、傷病手当金というものを受給していたり、あるいは退職に先立って、まだ受給してないけれども、これから受給をして、しばらくたってから退職するという方もいらっしゃいます。

退職した後も、健康保険の被保険者じゃなくなる、資格がなくなるとしても、この受給自体は退職後も続けることができることはよくあります。なのでこれについても、事業主として協力をするというケースもございますので、例えばこの事業主証明という書類を提出するといったことがございますので頭に入れておいてください。
健康保険、例えば組合健保だとか協会健保だとか、そういった保険の団体によっても若干違いますが、こういった制度はございますし、よく目にすることです。

5 社会保険・税務の処理

最後ですね。最後は簡単な話と言うか小さな話ですが、この他に社会保険や税務の処理もございます。
例えば厚生年金保険ですね。厚生年金保険じゃなくなりますといった手続きをすることもありますし、健康保険についての手続きもする必要がある。

健康保険については、脱退するだけじゃなくて、任意継続で続けるという選択肢もございます。いずれにしても労働者の方と話し合って、どうするのかということで、企業側でやる手続きがございます。

あと企業として所得税だとか住民税で、源泉徴収・特別徴収している時にはそれに伴う手続きも必要となります。先ほどの健康保険証を返してもらうだとか、源泉徴収票を渡すだとかいうことも、この手続きに関連してきます。

こういう細かい点も含めて、私の印象としてはこの5点の手続きを、概ね退職に伴う手続きとして把握してればいいのかなというふうに思います。

ということで今回の動画では、退職に伴う諸手続きについて解説いたしました。わからないことがございましたらお気軽にご相談ください。失礼します。

著者プロフィール


田代隼一郎 弁護士

おくだ総合法律事務所
平成24年弁護士登録
福岡県弁護士会所属
熊本県熊本市出身
真和高校卒
九州大学法学部卒
大阪大学大学院高等司法研究科修了

 

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