Q.地方で代々、日本旅館を経営してきましたが、近くにホテルチェーンが進出してくる予定があるので競争も厳しくなりそうです。私は歳を取ってきたので経営を辞めてもいいのですが、息子は別の会社に勤めているので跡を継ぐ気はありません。せめて旅館の建物と従業員の雇用は維持したい場合、どのようにすればよいでしょうか。

A.「合併」とは、ある会社が他の会社と一緒の組織になることをいいます。

例えば、日本旅館を経営している会社が、ホテルチェーンを経営している会社と一緒になることが、「合併」です。この場合、日本旅館を経営している会社の食堂部門だけなど譲り渡す対象を分けることはできませんし、元の会社が存続することもできません。

しかし「合併」は、後継者がいない事業にとっては、建物などの財産を有効活用したり、従業員の雇用を確保できたりするほか、存続する会社にとっては、より早く効率的に新しい事業に進出することができるようになりますから、中小企業にとっても「合併」を活用することは十分に考えられます。

「合併」は、法律に定められた手続きが必要ですし、勤め先が変わることになる従業員の雇用についても配慮したり、業界や相手方の経済状況にあわせて適切な時期を選択したりと、法務・財務・税務など様々な面から検討する必要がありますから、お気軽に弁護士にご相談ください。

1 合併とは

「合併」とは、ある会社が他の会社と一緒の組織になることをいいます。

「合併」は、会社の建物、従業員、ノウハウなどの財産が包括的に受け継がれるものですから、「事業譲渡」とは異なり、個々の財産の移転手続は必要ありませんが、財産の一部を除外することはできません。

また、「合併」では、事業を移転する側の会社は、消滅してしまいます。

例えば、日本旅館を経営している会社が、ホテルチェーンを経営している会社と一緒になることが、「合併」です。この場合、日本旅館の食堂部門だけなど事業ごとに譲り渡す対象を分けることはできません。

メリット デメリット
個々の財産の移転手続不要 財産の一部除外NG
吸収会社は解散・消滅

2 「合併」の種類

「合併」には、「吸収合併」、「新設合併」の2種類があります。一般には、「吸収合併」が多く用いられます。

(1)吸収合併

「吸収合併」とは、会社が他の会社とする合併で、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承継させるものをいいます。

例えば、日本旅館を経営している会社とホテルチェーンを経営している会社との合併で、日本旅館を経営していた会社がなくなり、ホテルチェーンを経営している会社が存続する場合が「吸収合併」です。

(2)新設合併

「新設合併」とは、会社が他の会社とする合併で、合併する会社の権利義務の全部を新たに設立する会社に承継させるものをいいます。

例えば、日本旅館を経営している会社とホテルチェーンを経営している会社が、新たに日本旅館とホテルを経営する会社を設立し、元の会社のどちらもなくなる場合が「吸収合併」です。

3 「合併」のご相談

「合併」では元の会社がなくなってしまいますから、「合併される会社は業績がよくないのでは?」など、よくない印象を持つ方もいらっしゃいます。

確かに、「吸収合併」では、元の会社は消滅してしまいますし、消滅した会社の経営者が引き続き存続する会社で経営者となることは少ないようです。

しかし「合併」は、後継者がいない事業にとっては、建物などの財産を有効活用したり、従業員の雇用を確保できたりするほか、存続する会社にとっては、より早く効率的に新しい事業に進出することができるようになりますから、中小企業にとっても「合併」を活用することは十分に考えられます。

「合併」は、法律に定められた手続きが必要ですし、勤め先が変わることになる従業員の雇用についても配慮したり、業界や相手方の経済状況にあわせて適切な時期を選択したりと、法務・財務・税務など様々な面から検討する必要があります。

「合併」については、当事務所は、公認会計士や税理士など他の専門家と連携しながら、適切に進めて参りますので、お気軽にご相談ください。