Q.家業の商店を株式会社にしましたが、不況で経営が苦しくなってきました。支払いを待ってもらえるなど協力的な取引先が比較的多いのでなんとかやっている状態です。裁判所を通さず会社を再建するには、どのような手続きがあるのでしょうか?

A.裁判所を通さず、債権者と債務者の合意に基づいて債務の整理をする「再建」に向けた手続きとして「私的整理」があります。

「私的整理」が当事者のみで行うのに対し、専門家が関与する手続きとして「事業再生ADR」があります。

「私的整理」と「事業再生ADR」は、どちらも裁判所を通さない手続きで、非公開で行われるため、悪い風評が広がらないというメリットがあります。

「私的整理」は、利用できる債務者に制限はなく、手続費用も比較的安価ですから、一般に多く用いられるといえます。

「私的整理」・「事業再生ADR」には債権者等の協力を得ることが必要で、そのためには事業再生の見込みやそれに基づいて適切な債務整理を提案する必要がありますから、企業倒産の専門家である弁護士にご相談ください。

1 再建型「私的整理」とは

裁判所を通さず、債権者と債務者の合意に基づいて債務の整理をする「再建」に向けた手続きとして「私的整理」があります。

経営困難な状況にある企業を再建するため、債務者と債権者・債権者同士が合意することにより、債務の猶予・減免などを行うものは、再建型「私的整理」とよばれます。

「私的整理」は、裁判所を通さないので自由に債務の整理ができます。しかし、あまりに不合理な提案をしたのでは債権者等の協力を得ることができません。そこで、「私的整理に関するガイドライン」等に従った手続きが求められることがあります。「私的整理に関するガイドライン」は、金融界・産業界を代表する者が中立公平な学識経験者などとともに活発に議論を重ねて公表したもので、法的拘束力はないものの、当事者が自発的に遵守することが期待されるものです。

2 事業再生ADR

「私的整理」が当事者のみで行うのに対し、専門家が関与する手続きとして「事業再生ADR」があります。

ADRとは、「Alternative Dispute Resolution」の略で、訴訟手続によらず公正な第三者が関与して民事上の紛争の解決を図る「裁判外紛争解決手続」のことです。

「事業再生ADR」は、中立な専門家が金融機関等の債権者と債務者との間の調整を実施し、企業の早期事業再生を支援するものです。

2007年に「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(ADR法)」が施行され、法務大臣の認証を受けた民間業者が「認証紛争解決事業者」としてADR事業を営めるようになりました。「認証紛争解決事業者」は、事業再生に係る専門的知識・実務経験を有するなどの要件をみたせば、「特定認証紛争解決事業者」として「事業再生ADR」の第三者機関となることができます。

3 私的整理・事業再生ADRのご相談

「私的整理」と「事業再生ADR」は、どちらも裁判所を通さない手続きで、非公開で行われるため、悪い風評が広がらないのがメリットの1つです。

「事業再生ADR」を利用できる債務者については、法律等による制限はありませんが、「特定認証紛争解決事業者」である事業再生実務家協会の規則では一定の要件をみたす必要があります。また、「事業再生ADR」では、第三者機関に対して支払う費用がかかります。

「事業再生ADR」と比べると、「私的整理」は、利用できる債務者に制限はなく、手続費用も安価です。こうしたことから、一般には「私的整理」が多く用いられるといえます。

「私的整理」・「事業再生ADR」には債権者等の協力を得ることが必要で、そのためには事業再生の見込みやそれに基づいて適切な債務整理を提案する必要がありますから、当事務所にご相談ください。