同族会社の少数株主「紙切れ」にしないために

こんにちは弁護士の奥田です。
今日は、同族会社の少数株主~紙切れにしないために~ ということでお話をしたいと思います。

同族会社の少数株主として、株を半数未満しか持っていないといったような株主のことを念頭に置いてお話しますけれども、そもそも株式会社の株主の権利(※ここでいう株式会社というのは商号に有限会社とついている会社も法律的には株式会社なので、有限会社も含めたところでの話と思って聞いていただいて結構です。)の大事なものとしては、一つは”利益の配当を受け取る”。会社が儲かったときに会社の利益の配当を持ち株割合に応じて受け取るということが一つ大切な権利としてあります。
それからもう一つは、取締役として会社の運営・経営に参加して、”役員報酬を会社から受け取る”ということが経済的側面からすれば、株主の権利として非常に大切な権利ということになります。
ところが、この利益の配当を受け取ったりとか、あるいは取締役になって役員報酬を受け取るためには、株主総会の決議が必要となってくるわけです。

ところが、株主総会というのは持ち株の過半数で原則決まってしまいますので、49%しか持ってない株主(例えば全部で100株の株が出ていて、そのうち49株しか持ってない株主)は、この49%だけでは、さっき言った株主総会での決議というのが、基本的にできないわけですね。
利益配当の決議(=全株主に配当をよこしてくれ、自分のところにも配当金を払うようにしてください、という決議)も、これも49%ではできませんし、それから取締役選任の決議、これも49%では決議自体成立しない、取締役にもなれないということになってしまいます。

具体的には、会社に1000万円の利益剰余金(利益)がありますというときに、本来だったら会社が1000万円儲かったら、これは仮に51%の株主と49%の株主がいるんであれば、510万は51%の株主に、それから490万は、49%の株主に公平に配当されるべきなんですけれども、こういう場合に、日本の同族会社なんかで行われがちなのは、過半数51%を持っている株主が、株主総会において、「利益配当の決議はしませんよ」と。「もう誰にも配当はしません、取締役選任を、自分(つまり51%株主)と、自分の奥さんとか、自分の子供とか、自分と家族を取締役にします。この取締役に報酬として儲かった分の1000万は払いますよ」といったような、大雑把に言うとそういう運営をしてしまうことがあります。これは直ちに違法かというと全然そうではなくて、この大資本多数決ということで、51%の株主で全部こういうことが原則としてできてしまうということになるわけです。

 

 

結局49%株主というのは、株主であっても、何も得られないということになります。配当も得られないし、それから取締役になって役員報酬をもらうということもできないということになります。ただそれだけだったら、マイナスはないわけですけれども、これが例えば相続のときなんかに49%の株ですね、これ実際何もそこから得るところはないわけですけれども、一応法律上というか理念上は、会社財産の49%持分を持ってるということですから、例えばこの会社が内部留保といって預金をめちゃくちゃ持ってますとかいったような場合には、これは相続税の評価では、大きな財産なんだというふうに高額の評価をされてしまって、それで多額の相続税が発生するといったような課税リスクも指摘されるところです。
ですので小規模会社・同族会社・非公開会社の49%株主というのは結局何も得られないのに相続税などがすごい多額のものがかかってくるリスクもあるということになるわけですね。

なので少数株主49%株主としては、どういうことをすればいいのかということなんですけれども、一応法律には、この少数株主、過半数に達しない50%未満の株主でも行使できる権利というのが規定されています。
一つは各種書類ですね、定款だとか株主名簿だとか、株主総会の議事録、計算書類、あるいは会計帳簿ですね。ここは大事なんですけれども会社の帳簿ですね。こういうものを閲覧できる、見せてもらうことができるという権利があります。
それから、株主総会を開いてくれということを請求できる権利というのもありますので、法律が少数株主に認めている権利を適宜適切に行使しながら、最終的なゴールとしては、49%の株主が持ってる株を、会社側、つまり51%を持ってる大株主側に引き取ってもらう、買い取ってもらうという交渉をすることになるというのが定石というか、そういうことになるかと思います。
ですのでこういった法律上の各種権利を適切に行使しながら株式の売買交渉を行っていくには、やはり弁護士などの専門家に助力してもらうというのがいいと思います。ですのでぜひこういう少数株主、同族会社の50%未満の株をお持ちの方は、弁護士さんに相談してみるのがいいんじゃないかなと思います。
今日の話は以上です。

著者プロフィール


奥田貫介 弁護士

おくだ総合法律事務所 所長
司法修習50期 福岡県弁護士会所属
福岡県立修猷館高校卒
京都大学法学部卒