引越しの際の原状回復義務~引越し費用をおさえるためのポイント

こんにちは、弁護士の尾形です。
本日は、引越しの際の原状回復義務というテーマでお話しします。

第1 原状回復義務とは

原状回復義務といってもピンとこない方も多いかもしれません。しかし、家を借りて引っ越す際には、必ず出てくる問題ですので、多くの方に関係のあるテーマです。

引越の際の原状回復義務というのは、おおまかにいって、家を借りた人が、家を返す場合に、借りた人のせいで家が傷ついていたときには、それを直して返す義務のことです。

では、具体的にどういう形で家を借りた方に関係してくるかというと、借りた家から引っ越す際には、多くの場合、退去の立ち合いというものが行われます。立ち合いの最後には、解約清算書や、原状回復工事の確認書といったものが手渡されます。業者からこれらの書類にサインを求められ、サインしたら立ち合いが終了と説明されることが多いのです。これらの書類に記載されている、クリーニング費用や、壁紙張替え等の工事代金の支払義務が、家を借りた方が負う原状回復義務の一例となります。

第2 ポイント① 通常損耗であれば、追加の工事費用を支払う必要なし

原状回復義務のポイントの1つ目は、原則として、家を借りている人のせいで傷ついたのでなければ、追加の工事費用を支払う必要はないということです。

原状回復義務という言葉からすると、借りていた家を返す際に、借りていた前の状態に戻すものという印象があるかもしれません。しかし、実際にはそうではなく、家を借りていた人のせいで家が傷ついた場合にのみ、その分の費用を支払う必要があるのです。

では、どのような場合に家を借りていた人のせいで家が傷ついたといえるかというと、これは、国土交通省が公開している「原状回復にかかるガイドライン」というものに、目安が書かれています。たとえば、壁や天井のクロスについては、タバコのヤニや臭い、壁に空いた釘やねじの穴は、家を借りた人の責任となりますが、テレビ、冷蔵庫の後ろの壁の黒ずみ等は、家を借りた人の責任ではないとされています。一読されると面白いかもしれません。

https://www.mlit.go.jp/common/001016469.pdf

ただ、注意が必要なのが、退去後のハウスクリーニングです。引越しの際、専門業者によるハウスクリーニングがなされることがあるのですが、これは、引越しの際の家の綺麗さに関係なく、行われるので、普通に考えると、家を借りた人の責任で必要となるものではありません。しかし、契約書にハウスクリーニングを行うこと、その際の費用について明記されており、契約の際にきちんと説明された場合には、支払わなければならない場合が多いです。

第3 ポイント② 長く住んだ方が原状回復義務は軽くなる

原状回復義務のポイントの2つ目は、長く住んだ方が原状回復義務は軽くなるということです。どういうことかというと、家に使われている壁紙や、カーペットには、耐用年数があり、その耐用年数を超える場合には、もはや価値がなくなっているので、張替えが必要であるとしても、その張替え費用を、家を借りている人が負担する義務はないのです。

例えば、壁紙や、カーペットは、耐用年数が、6年とされており、6年間住み続けた場合に、原則として、これらの張替えの費用を、家を借りている人が負担する義務はなくなります。

第4 ポイント③ 解約清算書等にすぐにはサインしない

原状回復義務のポイントの3つ目、これが一番大事かもしれません。業者から解約清算書や、原状回復工事の確認書を渡されても、すぐにはサインしないことです。

引越しの立ち合いの最後、業者から解約清算書や、原状回復工事の確認書を渡され、「これにサインしたら、立ち合いは終了です。」と言われることが多いと思います。しかし、これらの書面をよく見てください。1つ目のポイント、家を借りている人のせいで傷ついたものではない部分の工事が含まれているかもしれません。また、2つ目のポイント、耐用年数を経過した壁紙やカーペットの費用も含まれているかもしれません。こういったものが含まれている場合には、その場でのサインは拒否するべきです。

それでも相手方が執拗にサインを求めてくる場合には、退去は終了したことを相手方に確認してもらい、工事個所については別途協議することを伝えて、その場を離れるべきでしょう。業者が、単なる退去終了の確認書を持っているかもしれませんので、提示してきた場合には、それにのみサインしましょう。

第5 まとめ

本日のまとめです。

①家を借りている人のせいで傷ついたのでなければ、追加の工事費用を支払う必要はありません。原状回復義務には、借りている人のせいではない傷の補修は含まれないからです。

②長く住んだ方が原状回復義務は軽くなります。家に使われているものには耐用年数があるからです。

③解約清算書等にはすぐにはサインせず、内容を確認しましょう。不要な工事の費用が含まれているかもしれないからです。

本日のお話は以上です。最後までご覧いただきありがとうございました。

著者プロフィール


尾形達彦 弁護士

おくだ総合法律事務所
埼玉県私立西武学園文理高等学校卒
早稲田大学法学部卒
早稲田大学法科大学院修了
福岡県弁護士会所属