取引相手が倒産した場合(裁判所の破産開始決定や民事再生開始決定がなされた場合)、債権者としては、原則として裁判所に債権届け出を行い、これに対する配当を得るといった方法によって配当率での回収を図るほかないことになります。

ただ、次のような場合には、相当額の回収が可能なこともあります。

保証人や担保をとっている場合

この場合には、保証人に対する請求や担保権の実行(競売など)によって、売掛金の回収を図ることができます。

相殺ができる場合

これも①と似ていますが、たとえば、取引の保証金として一定額を預かっているような場合、この預かり金の返還債務と相殺することで実質的な回収が可能となります。

ただし、民事再生等の場合には、相殺の意思表示に期限がありますので、十分注意が必要です。

また、たとえば、取引開始時には個人から保証金を預かっていたところ、その後、個人が法人成りしたような場合には、当方の売掛金の債務者(法人)と預かり金の返還先(個人)が違うため、相殺できないという場合がありますので、取引先の個人が法人成りするような場合には十分注意が必要です。

動産売買先取特権により差し押さえができる場合

これは、A社がB社に商品(x)を販売し、B社がA社への代金支払前にこれをC社に転売していたところ、B社が倒産したという場合、A社は、B社のC社に対する転売代金債権を差し押さえることができるという制度です。

但し、差し押さえができるためには、①A社の債権が弁済期になっていること、②C社が未払いであること、が必要です。

したがって、①A社とB社との契約書において、「平時の支払は月末締めの翌月払いでもよいが、B社が手形不渡りを出した場合には、直ちに支払う」といった内容の規定が必要となります。また、②に関しては、場合によってはC社に事情を説明して支払いを止めてもらうことが必要となります。