実刑判決その後




こんにちは弁護士の田代です。今回の動画では「実刑判決 その後」というテーマについて解説致します。

テレビなどを見ていますと、誰々被告に懲役何年の判決が言い渡されました、という報道が世間を賑わせます。ただ、そういった報道がされた後に、実際どのようなことが行われるのかということについては、あまり立ち入って報道されることはございません。

そこで今回の動画では、判決が言い渡されたあと、どのような手続きがなされるのかについてイメージを持っていただきたく、解説いたします。

刑罰の種類

 

本題に入る前にまず基本的な話として、「刑罰」にはどのようなものがあるのかについて解説いたします。
日本の現在の刑罰としては大きく分けて、生命刑、自由刑、財産刑、この三種類が採用されています。
内容は見ていただくと分かるように、生命刑というと”死刑”ですね。生命を奪う刑ということです。
自由刑、これは自由を奪う刑。よくあるのが”懲役”、他に”禁錮”と”拘留”というものがございます。
最後に財産を奪う刑、これが財産刑で、”罰金”、”科料”というものがございます。
ちなみにこれは、日本で現在採用されている刑罰のメニューです。

他にも刑罰として、例えば”身体刑”や”名誉刑”、こういったものもございます。
身体刑というのは体に危害を加える刑です。よくあるのは、むち打ちなどですね。この身体刑は、例えば中東や東南アジア、そういったところの一部地域で今も採用されています。
それから、名誉刑です。これは名誉を剥奪するというもので、これについては今の平等社会の中ではあまり採用されていません。ただ歴史的に、例えば貴族など、名誉が重んじられていた時代には、それを剥奪するというのも一つの刑罰として存在しました。

ちなみに、逆に、この日本にあって他の国にはない刑罰としては、”生命刑(死刑)”です。生命刑(死刑)は日本以外の国でもありますが、例えばヨーロッパ諸国などでは生命刑(死刑)は採用されていません。またアメリカ合衆国も、州それぞれで刑罰が採用されていますが、概ね半分弱の州ではこの死刑は廃止されています。
死刑は廃止すべきかどうかということが時々議論が上がっているので皆さんご存知かと思いますが、今の実際としてはそのような状況で、生命刑(死刑)については採用されている国もあれば採用されていない国もあるというのが現状です。

刑罰の種類はこの三種類で、一番下にもう一つ、「実刑」と「執行猶予」という分類もございます。これは刑罰が言い渡されるとして、でもすぐに刑を執行するわけではなく猶予する、こういう制度が日本では取られております。猶予することができるということです。
懲役刑の執行猶予はよく知られていると思いますが、実は罰金刑や禁固刑、こういったものにも実刑と執行猶予という区別はございます。
今回の動画では主に、自由刑の実刑がなされた時の後の話がテーマになります。それ以外の執行猶予だと基本的には社会に戻れる、罰金だとお金を納める、という意味でイメージしやすいと思いますので、今回は自由刑の実刑、その後どうなるのかを解説いたします。

自由刑の実刑判決——–その後

自由刑の実刑判決が出されるとその後どうなるのか、これについても事件の流れによって多少違いがございます。

在宅事件

まず一番上の「在宅事件」ですね。勾留(身柄を拘束)されたまま裁判の場に臨む、それは身柄事件と言いますが、在宅事件はそうではない。自宅に居られて、裁判の日だけ出頭する、そういった事件のことを在宅事件と言いますが、これで実刑判決が言い渡されるとどうなるのかと言うと、判決が確定した後に呼び出し状が自宅に届きます。判決の確定というのは、日本は三審制になってますので、地方裁判所で判決が言い渡されても不服を申し立てることができます。不服を申立てなかったり、あるいは不服申立ての先でも判決が覆らないとなった時などに確定する。ということで、呼び出しが行われます。
これは最近、呼び出されて出頭した、という事件のニュースがありましたので、そういうイメージになるかと思います。

身柄事件

次に「身柄事件」ですね。これはもともと身体が拘束されたままの状況で、裁判所で判決を言い渡される。よく手錠と腰縄が付けられた状態で法廷に入って、そこで解かれて警察官の職員に挟まれて座っている、そういう被告人のイメージですが、この時に実刑判決が言い渡されても、そのまま身体拘束は継続され、それまで(実刑判決が確定するまで)は”未決拘禁者”という扱いですが、判決が確定した後は”受刑者”として扱われるということになります。

保釈事件

一番下の「保釈事件」、これは注意が必要で、お金を担保にして釈放されるというケースです。本来は身柄事件のものです。保釈については判決言渡しで実刑判決が出れば、その場で身体が拘束されます。つまり、まさに裁判所で、です。保釈が取り消されて身体が拘束されるということになりますので、保釈事件の判決には、それなりに事前に心づもりを持って臨まなければいけません。

今のが判決が言い渡された直後どのようになるのかというイメージですね。

収容—その後

①収容先の決定・入所

実際に実刑で収容された後の手続きについても簡単に解説いたします。流れとしては①②③④という順番になります。

まず、最初に収容先をどこに…刑務所などですよね。どこに収容するのかということが決められて入所の手続きが取られます。
この収容先の決定ですが、福岡の事件だから福岡の刑務所だ、とそういうわけではございません。内容としては矯正処遇、つまり”どんな処分をするのか”という方針と、あと下二つが重要ですが、”その受刑者がどのような人か”ということ、あと、犯罪傾向が進んでるかどうか、つまり”犯罪を繰り返してるかどうか”など、そういった点で入所先が決まります。

②矯正処遇と支援

少しだけ詳しく見ますと、矯正処遇の方針ということについては、主にこの表のような矯正処遇が取られています。つまり刑務所で何をするのか、ということですね。

刑務作業

刑務所で受刑者は何をさせられるのかということですが、まず刑務作業、これはイメージしやすいかと思います。ちなみに刑務作業でお金が出るということですけれども、これは、だいたい一月に5000円にも満たない程度しか収入としては入らないというのが現状です。

改善指導

他に改善指導というので、これは一般的な改善指導(道徳的な話)と、あと受刑者によっては、薬物依存の方や、暴力団関係の方、性犯罪の問題を持ってる方など、そういった受刑者の性質によってこの特別な改善指導がなされます。

教科指導

この他に、教科指導、いわゆる勉強ですね。そういったものもあります。
補習教科指導、これは義務教育レベルですね。つまり中学校程度までの学習については復習という形で勉強がある。
特別強化指導、これは主に高校レベルですね。受刑者によっては刑務所の中で高卒の認定を受ける、その試験に挑む、という方もおられます。

このような矯正処遇に基づいて、どのような処遇が必要かという判断で刑務所の選択に影響します。

受刑者の属性&犯罪傾向の進度

この他に、受刑者の「犯罪傾向の進度」(下二つ。犯罪傾向の進度が進んでいる者と進んでない者)というものや、その受刑者がどのような人か、ということで、例えば女性だったら女性の刑務所がございますし、また外国人だったら外国人の利用に適した刑務所というもの、こういった受刑者の「属性」によっても考慮されて刑務所が決まります。
この表の右側にある記号ですが、こういう記号で整理し、揃った記号に適した刑務所はここだ、ということで選ぶ。そういうイメージになります。

①の「収容先の決定・入所」を説明しましたので、次は②の「矯正処遇と支援」についても簡単に解説します。
これについては結局、今お伝えしたことです。矯正処遇としてはこの刑務作業と改善指導・教科指導というのがございます。この他に、支援として、社会復帰ができるように仕事を探したりだとか、そういった支援活動も刑務所内ではなされています。

③仮釈放、④釈放

その後、刑期が進んだ段階で仮釈放がされて、最後に本釈放という流れになります。
ちなみに仮釈放について、イメージとして、誰でも仮釈放で実際の刑期よりも相当早く出られるとか、無期懲役と言われても、実際には無期といっても数年あるいは十数年ぐらいで出られるんでしょ、というようなイメージがございますが、これは、今は必ずしもそうではございません。
一応法律上は、仮釈放は刑期の3分の1を受ければ出られる、無期懲役については10年間服役すれば仮釈放という制度を取ることができる、そんなふうに刑法で決められています。そのためそういったイメージを持たれる方もおられると思いますが、実際の運用としては、刑期の8割ぐらいを経た上でないと仮釈放というのは取られていません。無期懲役となると、実際に仮釈放で出られた人は年間数人です。非常に限られております。むしろ刑務所内で生涯を過ごしてしまう人が多いのではないかと思います。

以上、今回の動画では「実刑判決を受けたその後」について解説いたしました。また他の動画でも様々な刑事事件、あるいはそれ以外の事件についても解説しておりますので、よかったらご覧ください。

著者プロフィール


田代隼一郎 弁護士

おくだ総合法律事務所
平成24年弁護士登録
福岡県弁護士会所属
熊本県熊本市出身
真和高校卒
九州大学法学部卒
大阪大学大学院高等司法研究科修了