法律業界の非接触・オンライン改革




最近、ハンコ・印鑑を廃止する改革が話題になっています。

私の動画でも、契約書・印鑑は必要か?というテーマについて解説しましたが、その後も、行政が主導となってハンコ・印鑑を廃止するとの発表がされて、世間を賑わせました。

もともと、ハンコ・印鑑は、日本特有の習慣であることやインターネットとの相性がよくないことから、時代に沿わない面があったかと思います。

さらに、昨今の新型コロナウイルス感染症の拡大によって、人と人との接触を避けることや、事務手続を効率化することが求められるようになり、そのような中でハンコの不合理さがますます目立つようになりました。

このような、ハンコ・印鑑の廃止や、非対面化、オンライン化といった要請という面では、法律業界にも波及しています。我々弁護士が「法律事務所」と名乗っているように、弁護士の仕事には事務仕事も多く、そのため、ハンコ・対面・FAXなどといった古い慣習の影響を少なからず受けていました。

要するに、大変古い業界だったわけですが、新型コロナウイルス感染症の影響もあって少しずつ新しい風が吹き込んできています。

例えば、法律相談の方法について、面談以外での相談が広まってきています。
これについて、とりわけ大きな変化は、法テラスでの電話相談が可能となったことです。
法テラスでは、特別裕福でない方を対象に、弁護士への相談料が無料になる制度があります。
この無料相談制度と電話相談を組み合わせることで、無料で手軽に弁護士に相談することが可能となります。

そして、法テラスを用いた相談は、日本全国の多くの事務所で可能となっています。そのため、皆様も、相談希望の法律事務所に電話する際に「法テラスの電話相談は可能ですか」と問い合わせてみるとよいかと思います。あるいは、インターネット等で検索すると法テラスの受付電話番号が見つかりますので、そちらに直接お問い合わせいただいてもよいかと思います。

また、裁判についても少しずつ変化してきています。
今年の2月から、現行法で出来る範囲で、福岡を含む一部の裁判所でオンライン裁判の運用が開始されました。
これにより、Microsoft Teams を用いて、直接対面することなく裁判を行うことが可能となっています。
そして、このようなオンライン裁判を導入する裁判所の数は、その後も日本全国で拡大しています。

また、2年後からは、オンライン裁判の導入に向けた法律の改正が予定されています。法律の改正がなされれば、より多くの手続で柔軟にオンライン化が可能となることが期待できます。

さらに、それから数年後になりますが、将来的には、手続の申立て(訴状の提出など)や書面のやりとりなどもオンライン化される予定です。

このように、今回の動画では、法律業界という古い業界でも少しずつ改革が進んでいる点をご紹介しました。今後、手続のオンライン化や柔軟化はほとんどの業界で必要になってくると思います。

また、今回の動画をご覧になった方の中には、法律業界や我々弁護士について「使い勝手が悪い」「敷居が高い」といった従前の印象を持たれている方もいるかもしれません。この業界は、現在や将来、少しずつ変化していますので、かつてそのような印象を持った方でも、ぜひお気軽にご相談いただければと思います。

著者プロフィール


田代隼一郎 弁護士

おくだ総合法律事務所
平成24年弁護士登録
福岡県弁護士会所属
熊本県熊本市出身
真和高校卒
九州大学法学部卒
大阪大学大学院高等司法研究科修了