被告について





こんにちは。弁護士の田代です。今回の動画では、「被告」について解説いたします。

被告と言うと、良くない印象を持たれている方もいらっしゃるんじゃないかと思います。 この被告という言葉は、ニュースなどの報道で誤解を与える表現がされたり、あるいは言葉遣いを間違えられたりしているため、誤解されがちです。そこで今回は、皆様の被告に対する誤解を解いてただけるよう解説致しますので、よろしければお付き合いください。

1.○○被告

(1)被告は、罪を問われていない

まず、誤解の一番目は、○○被告という言葉の意味です。例えば、田代被告と言いますと、何か罪に問われてるんじゃないかとそういうふうに誤解されるむきがございます。しかし被告は罪に問われてはいません 。

ここは刑事事件で罪に問われてる人のことは「被告人」と言いまして「被告」と「被告人」は違います。ところが刑事事件の報道などで時々被告人のことを○○被告という誤った表現がされてしまうことがありまして、容疑者のようなイメージを持たれてしまうことがありあります。しかし、被告は決して罪に問われているわけではない、そこをまずご理解ください。

(2)被告は、原告から訴えられた人

被告とは何かと言いますと、民事事件の関係で原告から訴えられた人です。他方で、原告とは、民事裁判をするために裁判所に訴状を提出した人です。
そして、裁判となると相手がいる。原告は、誰かと問題を抱えており、それを解決するために裁判を利用しているわけですが、その裁判の相手が被告です。そのため、トラブルを抱えてる二人のどちらが裁判所に訴状を提出するのか、これによって提出した方が原告で、その相手が被告になる、それだけの話なんですよね。

(3)被告と原告とは、対等な関係になる

したがいまして、被告と原告は、全く対等な関係にあります。特に片方が原告という表現で、もう片方に被告という、被告人に近い表現が使われてるからといって、そこで何かしら優劣は何もございません 。

以上、1番目の○○被告という表現についての誤解が生じやすい点を解説いたしました。

2.被告は、取材に対し「訴状を見ていないのでコメントできない」

2番目によく誤解される点ですが、被告は、取材に対し、「訴状を見ていないのでコメントできない」という報道が時々なされます。この報道を見ると、何か後ろめたいことがあるんじゃないか、コメントできないことがあるんじゃないか、あるいは、訴状を見ろよと、そういうふうに思われる方もいらっしゃるかと思います。

⑴ 被告は、本当に訴状をみていない

しかし、第1に、こういったケースでは、被告は本当に訴状を見ておりません。これは、絶対にというわけではございませんが、通常は本当に訴状を見ていないということが、裁判実務に携わっていると分かります 。

⑵ 訴状は、被告にまだ届いていない

それがなぜかと言うと、訴状は、通常、被告が取材されてる段階では被告にまだ届いてないからです。先程の説明のとおり、原告というのは裁判所に訴状を提出する人で、被告はそのトラブルの相手方ですね。原告が裁判所に訴状を提出すると、その後、裁判所からその訴状が被告に送られます。ところが、原告が訴状を提出してすぐに被告に送られるわけではなく、訴状の提出から被告にそれが送られるまでに早くて2週間程度かかり、遅ければ1か月以上かかることもございます。 そしてよく被告が取材されるタイミングは、原告が訴状を提出した直後とか、あるいはその翌日・翌々日です。例えば、有名人が名誉毀損を受けたとされるケースなどでは、訴えた原告が報道機関に自分が訴えました、訴状を提出しましたという話をするわけです。それを受けて、その日あるいはその翌日などに報道機関が被告を取材し、「訴えられましたけれども、コメントをください」などと質問するわけですが、この段階では、被告には訴状が届いていないわけです。そのため、被告としては、まず本当にこの人から訴えられたのかも分かりませんし、何をテーマにどういう訴えがされたのかも分からない。

⑶ 訴状が届くまでは、被告はコメントしようがない

そこで、被告は、訴状が届くまでは本当にコメントのしようがないんですよね。この点よく誤解されますので解説いたしました。

3.被告は答弁書を提出した

次に、誤解されやすい点の3つ目は、被告が裁判所に答弁書を提出したという時の、この「答弁書」という書類のイメージです。

⑴ 答弁書=説明書ではない

世の中には、答弁という言葉がありまして、例えば、国会答弁と言えば、演説、説明、釈明、弁明をするようなイメージがございます。しかし、答弁書という書面は、そういう国会答弁でイメージされるような説明、演説、釈明、弁明といった書面ではありません。

⑵ 答弁書は、争点整理のために裁判所から要求される書面

では、どういう書面かいうと、答弁書というものは、争点整理のために裁判所から被告に提出を求められる書面なのです。これは、原告から裁判所に訴状が提出された後に、この訴状に書いてることに対して被告はどう考えるのかという点が確認されます。つまり、裁判所は、争点があるのかないのか、あるのであれば何が争点なのか、争点整理をしていく必要ございますので、そのために、訴えられた相手に対して答弁書を提出するように求めます。そのため、被告が答弁書を提出することは、裁判所の要望に応じた書面を提出したというだけの話なのです。この点について答弁書という言葉から誤解が生じやすいので解説いたしました。

4.被告は、第1回弁論期日を欠席した

次に4番目。被告が第1回弁論期日を欠席したと、時々ニュースになされます。

⑴ 第1回弁論期日に欠席することは、普通のこと

被告の欠席については、裁判で訴えられて呼び出しを受けたのに、欠席するとはけしからん、何か後ろめたいことがあるんじゃないか、というような印象があります。しかし、実は、第1回弁論期日に欠席することは普通のことです。

⑵ 被告は、答弁書を提出すれば、第1回弁論期日に出席する必要がない

なぜかと言いますと、被告は、答弁書を提出すればそもそも第1回弁論期日に出席する必要はありません。
これは、第1回の弁論期日は、原告と裁判所が二者で協議をして決めるんです。そして、裁判所から被告に対し、訴状と一緒にこの日が第1回弁論期日になりますという案内が届きます。この日程調整のやりとりがあることも、先ほど申し上げました、訴状が被告に送られるまで時間がかかる理由の一つです。そして、被告にとっては、原告と裁判所とで決められた日を示されて、この日が第1回の弁論期日です、裁判がありますと案内がされるわけですが、その日に勝手に決められても、裁判所に行けるかどうか分からない、予定が入ってるかもしれないと、そういう問題があります。そのため、最初の裁判の日には、被告は必ずしも出席する必要はないわけです。ただ、欠席する時には、せめて答弁書は出してくださいねと書面の提出を求められます。これが、先ほど説明した答弁書ですね。争点を明確にするための書面、つまり、原告の訴えに対して被告はどう考えるのかということを明らかにする書面を出して下さいと
いう運用になっております。

そして、第1回目の弁論に欠席しても、裁判は通常、訴状が提出されてから判決が出るまで、大体1年くらいかかるんですよね。その間に弁論の日も第1回の次は、その1か月後に第2回、そのまた1か月の後に第3回……という風に、何回も重ねて争点整理がされていきます。そのため、第1回目に欠席をしたとしても、 答弁書をきちんと記載して出していれば、それで直ちに裁判自体に影響するということはありません。

⑶ 注意点!

ただ、注意点がございます。第1回の弁論期日に答弁書を出さずに欠席すると、被告に言いたいことはないという扱いになり、訴状の通りの判決が出てしまう運用になりますので、もし欠席される時は必ず答弁書を裁判所から求められてる形式に従って、きちんと記載して提出する必要があります。
それと、逆に原告側の注意点。原告側も1回目の期日は欠席していいのかと言うと、違います。原告側は、1回目の期日でも欠席できません。それは、原告と裁判所とで調整して決めた日程なので、原告は来てくださいという話になります。この点は、弁護士であっても、うっかりしていて、自分が原告側か被告側かの確認がおろそかになって、1回目の期日欠席してしまったという話も聞きますので、この点はご注意ください。

ただそれだけ、弁護士にとっては被告側の立場で第1回目の裁判を欠席することが当たり前の事なのです。その点はご理解ください。

5.被告と和解が成立した

 

次に、誤解されやすい5番目が、和解です。被告と和解が成立しましたといった報道がございます。

⑴ 和解しても、仲直りしたわけではない

和解というと、手と手を取り合って仲直りするというようなイメージがありますが、和解をしたとしても、仲直りしたわけではない。これが正直な印象です。

⑵ 和解は、判決に代わる裁判の終わり方

では、和解とは何なのかというと、判決に代わる裁判の終わり方なのです。つまり、原告が被告に対し、例えば100万円払ってくださいという裁判を起こしました。この裁判について、和解以外の終わり方としては、その一つが判決です。判決だと、裁判官が争点整理を行ってその結果を見て、被告に100万円を払ってくださいという結論が出るのか、あるいは原告の請求を棄却する(つまり、被告は1円も払わなくていいです)という結論を出すのか、そういった判断をします。白か黒かですね。時々事案の内容によってはその間の50万円などといった判決になるケースもございますが、判決はいずれにしても裁判官が決めてしまうものです。

ただ、和解の場合は、裁判官の方から判決の方向性を示唆された上で、このまま判決をするのか、あるいは、判決の前に和解しませんかと案内されます。例えば、先程のケースでは、判決では100万円の支払になりそうだが、早く解決できるから90万円で和解しましょうと和解を促したり、あるいは、判決だと請求は1円も認められないけれども、例えば解決金10万円で和解しましょうと促されたりします。このように、和解は、基本的には判決と同じようなイメージ、判決から金額を調整した解決方法というイメージになります。

こういうケースで和解をするメリットとしては、例えば、勝訴の判決が出たとしても、負けたほうには、上級裁判所に不服を申し立てて、もう一度裁判を見直してもらう機会が与えられます。そのため、裁判だとお互いに長引いてしまうし、あるいは、上級裁判所でも勝訴を維持できるのかわからないという中で、和解で終わるということがよく取られております。実際に、日本の裁判のうち、3割から4割は和解という形で終わっております。このように、和解は一応お互いが合意しないと和解は成立しません。ただ、決して仲直りしたというわけではないという印象です。

⑶ 裁判所は、和解が好き(私見)

次に、私の印象としては、裁判所は和解が好きです。これは私見(私個人の考え)ですので、必ずそうかはわかりません。
しかし、実際に、裁判所はとにかく和解をよく勧めてきます。これがなぜかと言うと、一つは、裁判所として、判決で一方的に決めるよりは、原告と被告それぞれから了解を得た形で解決をするというほうが、トラブルの解決をしてもいいんじゃないかとそういうところもあります。また、裁判所にとって、判決を書くことは大きな負担になります。判決は、スポーツの審判のように結論だけを決めて勝者に手を挙げさせるだけではなくて、ちゃんと文章でその理由を説得的に書かないといけない。万が一、上級裁判所に不服を申し立てられた時には、他の裁判官から判決の内容を確認されることになるため、いい加減な文章も作れません。そういった意味で、判決を書く前に和解という形で解決ができれば、裁判所の仕事としても効率化ができる。裁判所が和解を勧める理由の中にはこういった理由もあるんじゃないかということが、私の個人的な見解でございます 。

以上、今回の動画では、被告に関してのイメージについて、誤解されやすい点を解説いたしました。今回の動画で被告のイメージが多少変わったという方もいらっしゃるかと思います。また、原告と被告が対等である説明しましたが、これは、原告にも被告にも対等に裁判を受ける権利があるわけです。そのため、裁判を受ける権利は、日本人に保障された権利ですし、世界を見ても多くの国で保障された権利です。裁判手続を利用することは、権利であって、特に後ろめたいものだとか、後ろ指を指されるものではありませんので、トラブルでお悩みの方は、是非、裁判手続きを利用してください。今回の動画はこれで失礼します。

著者プロフィール


田代隼一郎 弁護士

おくだ総合法律事務所
平成24年弁護士登録
福岡県弁護士会所属
熊本県熊本市出身
真和高校卒
九州大学法学部卒
大阪大学大学院高等司法研究科修了