賃貸建物の明渡請求の実際




こんにちは弁護士の奥田です。
今日は賃貸建物ワンルームの建物の明け渡し請求についてですね。
これにどのくらいの時間、それから費用がかかるのかということについてご説明します。実際うちの事務所で扱った事例をもとにご説明したいと思います。

対象はワンルームマンションで、広さは7~8坪の一般的なワンルームマンションで、家賃が35000円ぐらいのものでした。一人住んでおられて、この方が賃料を払っていただけなくて、家主さんからの依頼で明渡しの請求をしたといったような事例です。
どういう経緯で進んだかということを時系列で説明をしたいと思います。

1 提訴 R2.8/1

まず去年の8月1日(日にちについては実際とは若干ずれていますけれども、だいたいの期間等についてはその通りですので、そう思って聞いてください。)に裁判をしました。提訴ですね。裁判所に訴状を出すという事をします。

2 第1回 R2.10/1

そうすると、裁判所のほうで相手の方へも呼出状を出して、第1回期日というのが設けられます。それが10月の1日でした。ここはコロナの関係で若干(期間が)あいたかな、というのはありますけれども、それでもだいたい1ヶ月か2ヶ月ぐらいはこの間は空いちゃうということになります。第1回の裁判期日っていうのはセレモニーみたいな話で、相手方は「争います」という答弁書を1枚出すだけで第1回は終わって、具体的な話は第2回ということになって、通常、日本の民事訴訟では期日と期日の間で1か月ぐらいは空きますから、今回の場合はちょうど1ヶ月空いたと。

3 第2回 R2.11/1

第2回は何をやるかと言うと、本件では賃料(この場合は数十万円滞納をしていました)の滞納でもって賃貸借契約が解除されて、賃借り人のほうは出て行かないといけない。この法的義務には基本的には争いがないケースでしたので、第2回のときには裁判官の方から「出て行かないといけないんだから、もう和解で”何日までに出て行く、その代わり今までの滞納賃料を少しまけてあげる”とかそういう形で和解できませんか?」といったような話があるわけですけれども、本件では和解にはならずに、結局判決ということになって、

4 判決 R2.12/24

12月の年末に判決が出ました。判決は当然のことながら出て行けといったような、明け渡しなさい、という判決が出たわけです。それとプラス滞納賃料を支払いなさい、というような判決が出てます。

5 強制執行申立 R3.1/10

この判決が出てそれでも相手の方からは明け渡してもらえませんでしたから、年明けの1月の10日に強制執行の申立をするという運びになりました。
強制執行の申立というのは、裁判所に訴状とは別に、無理やり明け渡しをさせてくださいというような書類を出して強制執行を求めるというようなことになります。

6 催告 R3.2/10

この強制執行の申立を受けて「催告」、これは何かというと、申立を受けて裁判所の執行官という方がこのワンルームマンションまで業者を連れて行って、賃借人の方にお会いして、「あなたはもう強制執行の申立を受けていますから、今から1ヶ月猶予をあげますのでその間に出てください。出て行かない場合にはこのお部屋については強制執行ということで荷物を全部搬出して出ていってもらうことになりますよ」というようなことを告げるわけです。催告というのは「出てってください」という催促をする、というようなことになります。
1ヶ月時間をあげますからその間に出ていって下さい、というわけで、その時に業者の方も同行してもらってますので、業者の方に部屋を見てもらって、このくらいの荷物であればだいたい人員が何人ぐらいで何時間ぐらいあれば全部搬出できますね、といったようなことを見積ってもらって、費用としてだいたいこのぐらいかかりますよね、という形で見積もってもらう。この催告を受けて、うちの事務所のほうに執行官から連絡があります。業者に見積らせたところ大体このくらいお金がかかりますよ、といったような形でそのお金を裁判所にあらかじめ納めてください、と言われます。このときは40万円納めてくださいと言われましたので、40万円納めて、何もなければ(相手がこの断行の1ヶ月後までに出てくれれば)これ(40万円)は基本的には返ってくるわけですけれども、出て行ってくれなければこの断行の時に業者が行って荷物の搬出をするわけですから、費用がかかることになります。

7 断行 R3.3/10

今回は結局、1ヶ月の期間にも出ていただけなくて断行です。断じて行う、と書くわけですけれども、この日は実にトラックと搬出する作業員の方が数名一緒に行って、「もう出てください」ということになりました。ただ、ワンルームマンションの中にはその人が生活してるわけですから物がいっぱい置いてあるわけですけれども、これをどこかに搬出しても、いきなり捨てるわけにはいきませんから、どこかに保管しないといけないわけです。保管するのもこちらが納めた40万円の範囲内で執行官が倉庫を契約して、倉庫の中に一旦全部移すということをしないといけないわけですけれども、それでまたお金がかかっちゃうわけですから、その時はどうしたかというと、とりあえずこの3月10日には鍵を変えちゃって、ご本人はもう出てください、明日からこの部屋には入れませんよ、と当面必要な物を持って出て行ってもらったわけです。

ただ、「1ヶ月間また余裕をあげますから、その間にあなたのほうで品物を出したい、いるものがある、ということであれば取りに来てください」、賃貸人のほうでも「それはそれで構いませんよ」と言ったようなお話で、3月10日の日に全部鍵を換えて相手の方は出て行った形になって、ただ荷物が置いてあるから1ヶ月猶予をして、その間に必要なものは取ってください、といったようなことをしました。
家賃滞納のようなケースでは、その部屋の中にも何かお金になるようなものはないわけですから、どこかに持って行ってこれを売ってそれをお金に換えてこちらが回収する、というようなケースはもうほぼありませんから、実際上はそういう風な形をとることになります。

8 売却(廃棄) R3.4/10

結局、1ヶ月の猶予の間に、相手はとりあえずいるものの片付けをされてそれでも物は残ってるわけですから、「売却」、残ったものを売りますという手続きにはなるんですが、誰も買いませんから、実際はもう廃棄になって、ようやくこの4月の10日に至って家主の方に、中に何もない状態でワンルームマンションが帰ってきた、といったような形になりました。

 

この家賃はわずか35000円ですけれども、この賃借人の方が賃料を滞納して出ていかないという話になると、約8ヶ月ぐらいの時間がかかって、裁判所に40万円納めたんですけれどもそのうち一部返ってきて、実際30万円ぐらい使いました。ですので裁判所に納めたお金は30万円なんですけれども、それ以外に私どもの事務所の弁護士費用も数十万円かかっているので、この35000円の家賃のワンルームマンションでもこういったトラブルがあると、やっぱり結構な金額とそれから約8ヶ月ぐらいですね、最低でもそのくらいの期間がかかってしまう。最悪ですね。
先ほど申し上げたように、どこかの段階で相手が出ていきます、という形になることもありますけれども、相手が徹底的に出て行かないということになると、”フルコース”、こういうことになって費用と時間がかかってしまうことになります。
ですので大切なことは、賃料の滞納が続いていくとこういったこじれたことになるケースが多いような気がしますので、なるべく早い段階で弁護士などの専門家に相談をされて、早く動いて出て行ってもらえればまたすぐ(他の人に)貸せるわけですので、時間が経つとなかなか賃料も入ってこないしお金もかかっちゃう、といったような形になりますので、ぜひ早めの対応を検討するのが良いかなというふうに思います。

今日の話は以上です。

著者プロフィール


奥田貫介 弁護士

おくだ総合法律事務所 所長
司法修習50期 福岡県弁護士会所属
福岡県立修猷館高校卒
京都大学法学部卒

 

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