「社内でコロナ陽性者・濃厚接触者が!」 ハラスメント対策が必要です「パワハラ防止法」に見るコロナ-ハラスメント対策①





1 はじめに

今回からはシリーズで、「『パワハラ防止法』に見るコロナ-ハラスメント対策」と題し、コロナにまつわる職場内のいじめ・嫌がらせ等に対し、事業主(会社)側が取るべき対応について、いわゆる「パワハラ防止法」を読み解きながら、解説していきたいと思います。
1回目となる今回の動画では、
■パワハラ防止法の概要
■コロナ-ハラスメントが“パワハラ防止法”の適用対象になり得ること
について解説します。

~中小企業経営者の方へ~
パワハラ防止法は、令和元年5月に成立し、令和2年6月から大企業が、令和4年4月から中小企業が、その適用を受けることになります。
そのため、特に中小企業の経営・管理を行う立場の方におかれては、今後パワハラ防止法の適用対象となるにあたり、予習としてもご覧いただけたらと考えています。

2 “パワハラ防止法”

⑴ “パワハラ防止法”とは

パワハラ防止法とは、もともと存在する「労働施策総合推進法」の“改正法”のことを指して言います。(もっと正式に言うと、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」。)先ほど冒頭で述べたとおり、この改正法は令和元年5月に成立し、大企業では令和2年6月から、中小企業では令和4年4月から適用がスタートすることになっています。

 ⑵ パワハラ防止法の概要ーポイント3つ

① 事業主のパワハラ対策を義務化

職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となります。

“雇用管理上必要な措置”とは、具体的には以下の措置をいいます。
ⅰ)事業主によるパワハラ防止の社内方針の明確化と周知・啓発
ⅱ)苦情・相談の受入れ体制・対応の整備
ⅲ)被害を受けた労働者へのケアや再発防止といった、事後の迅速かつ適切な対応の整備
ⅳ)その他、上記ⅰ~ⅲの措置と併せて講ずべき措置として、相談者・行為者等のプライバシー保護など

  ② 不利益取扱いの禁止

また、事業主は、労働者が職場におけるパワーハラスメントについての相談を行ったことや雇用管理上の措置に協力して事実を述べたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをすることが、法律上禁止されます。

  ③ 対象となるパワハラの定義・条件を明示

防止措置の対象となる“職場のパワーハラスメント”とは、
職場において行われる、
ⅰ)優越的な関係を背景とした言動であって
ⅱ)業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により
ⅲ)労働者の就業環境を害するもの(身体的若しくは精神的な苦痛を与えること)
であり、ⅰ~ⅲの要素を全て満たすものをいいます。

⑶ 違反した場合、罰則はあるの?

パワハラ防止法には、罰則の規定はありません。
そのため、事業主が、たとえば上記のとおり義務付けられた適切な措置を講じなかったり、禁止事項に反して相談者に対し不利益な取扱いをした場合であっても、「罰則」を受けることはありません。
しかし、義務事項・禁止事項に違反した事業主は、厚生労働大臣による助言・指導・勧告の対象となります。さらに、事業主が勧告に従わない場合には、その旨が公表される可能性もありますので、やはり違反した場合のリスクはそれなりに存在します。

3 “パワハラ防止法”とコロナ-ハラスメントとの関係

それでは、ここから、パワハラ防止法とコロナ-ハラスメントの関係について、説明していきたいと思います。

 ⑴ パワハラ防止法におけるパワハラとは

ここで、パワハラ防止法が明示したパワハラの定義をもう1度おさらいしましょう。

防止措置の対象となる“職場のパワーハラスメント”とは、
職場において行われる、
ⅰ)優越的な関係を背景とした言動であって
ⅱ)業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により
ⅲ)労働者の就業環境を害するもの(身体的若しくは精神的な苦痛を与えること)
であり、ⅰ~ⅲの要素を全て満たすものをいいます。

 ⑵ 「優越的な関係を背景とした言動」とは

上記のうち、今回のテーマで重要となるのがⅰ)優越的な関係を背景とした言動 です。
「優越的な関係を背景とした言動」と言えば、パッと思いつくのは上司と部下といった上下関係を背景としたケースだと思いますが、実はそれだけではないのです。

厚生労働省は、この「優越的な関係を背景とした言動」の具体的な内容について、以下のとおり説明しています。

<「優越的な関係を背景とした言動」の具体的な内容>

当該事業主の業務を遂行するにあたって、当該言動を受ける労働者が行為者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるもの
(例)
・ 職務上の地位が上位の者による言動
・ 同僚又は部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの
同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの  等

 ⑶ コロナ-ハラスメントも、パワハラ防止法の適用対象になり得ます

さらに、厚生労働省は、昨今の新型コロナウイルスに関連したいじめ・嫌がらせ等について、

過去に新型コロナウイルスに感染したことを理由として、

人格を否定するような言動を行うこと、一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし職場で孤立させること等は、職場におけるパワーハラスメントに該当する場合があります。

との注意喚起を行っています。
厚労省が明記しているとおり、新型コロナウイルスに関連したいじめ・嫌がらせ等も、パワラハ防止法が定義するところのパワハラに該当する可能性があります。

これはつまり、事業主の立場から見れば、パワハラ防止法における義務事項・禁止事項について、コロナ-ハラスメントも視野に含めた対策を取る必要性が高まってきている、ということになります。

4 まとめ/次回の解説内容

以上でいったん区切りたいと思います。
今回の動画では、
■“パワハラ防止法”の概要
■コロナ-ハラスメントが“パワハラ防止法”の適用対象になり得ること
について解説しました。

次回の動画では、
■パワハラ・コロナ-ハラスメントに関し、事業主が取るべき対策は?
ということを中心に解説していきたいと思います。

次回もご覧いただけたら嬉しいです。
引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

著者プロフィール


井上瑛子 弁護士

おくだ総合法律事務所
兵庫県立神戸高等学校卒
九州大学法学部卒
九州大学法科大学院修了
福岡県弁護士会所属