最低賃金制度の概要




こんにちは弁護士の田代です。
今回の動画では最低賃金制度の概要についてご説明致します。

皆様、最近テレビのニュースなどで「最低賃金」の報道を目にされる方、耳にされる方がいらっしゃるのではないでしょうか。
最低賃金制度は毎年10月の頭に改定がなされておりますので、毎年この頃にニュースなどでよく報道されます。
そこで今回の動画では皆様に最低賃金についての知識を少しだけ深めていただきたいと思いまして解説いたします。

1 最低賃金の根拠

最低賃金制度について解説していく順番としまして、「1 最低賃金の根拠」ですね、ここから解説いたします。
最低賃金というのはどういうものを根拠に作られてるのかと言いますと、これは法律ですね、最低賃金法というこれ専用の法律がございまして、それで定められています。

法律の内容としては大雑把に言いますと、最低賃金審議会というそういう機関が最低賃金をどうするかということを話し合いまして、その結果に基づいて労働局長が決定する。最低賃金審議会も労働局長も概ね都道府県別にそれぞれありまして、その地域の実情に沿って最低賃金が決められるという仕組みになっています。そのため、毎年10月に法律が改正される、この地域はいくらになる、とかそういうわけではございません。法律ではこういう決まりの枠組みが決められておりまして、それに従ってこの最低賃金審議会、それと労働局長が決定するという運用になっています。

2 2種類の最低賃金

 

次に、最低賃金の基本的な知識として、2種類あることについてご理解頂きたいと思います。具体的に「地域別最低賃金」というものと「特定最低賃金」というもの、この2種類がございます。

① 地域別最低賃金

 

地域別最低賃金は皆様にとってなじみの深いものかと思いますが、例えばこの画面に出ていますように、北海道では889円、東京では1041円、愛知では955円、大阪では992円、福岡では870円。これが今年の10月にそれぞれ地域別に決められたものです。このように概ね都道府県別で決められる最低賃金というのが「地域別最低賃金」です。

② 特定最低賃金

 

もう一つ「特定最低賃金」。これについてはあまり馴染みのない方もいらっしゃるかと思いますが、産業別に決められておりまして、例えば福岡県内での取り決めとしては、百貨店や総合スーパーについては889円、自動車の新車の小売業いわゆるディーラーとかそういったところでは941円と、こういった最低賃金が決められています。

特色としては、各地域・都道府県ごとにそれぞれある業界というものに、ピンポイントにいくつかの業界について最低賃金を底上げしている、というイメージですね。ちょっと面白いのが、福岡ではそんなにないのですけが、たとえば隣の佐賀県では、陶磁器の製造についての最低賃金が決められていまして、これは有田焼といったものを想像しますが、さらにその隣の長崎県では、造船業・船を造る業界についての最低賃金が決められていたりと、結構その地域で力を入れている分野、という特色が見えてくるものがあるんですよね。

福岡についての百貨店とか自動車小売業、これはちょっと理由は分かりませんけど、例えば全国どこにでもある仕事でして、仕事の内容も基本的には同じような仕事なんですよね。こういうものについては、よその都道府県の方が最低賃金が高くなるとそちらに人材が流れてしまう、そうならないように百貨店とか自動車小売業とかそういったものについては決められやすいと、そういったことを耳にしたことがございます。

3 最低賃金制度の効果

最後ですね。「最低賃金制度の効果」これについてご説明します。
大きく言うと二つの効果がございます。
①最低賃金を下回る契約は無効、②罰金。

① 最低賃金を下回る契約は無効

①からご説明します。「最低賃金を下回る契約は無効」というので、注意点としましては契約ですね。これは契約途中でも適用される、つまり最低賃金がいくらと決まりまして、これから誰か人を雇うとそういった時に気をつけないといけない、これは当たり前なんですが、もう今すでに人を雇ってる、その人たちについても最低賃金が上がったら下回ってはいけないので、上げないといけない、見直さないといけない。この点、ご注意ください。

また「下回る契約は無効」、この無効ですが、もちろん契約がなくなるというわけではございません。契約はありますが最低賃金を下回る取り決めであれば、最低賃金の金額まで引き上げられてしまうということになります 。

そのため、例えば、10月1日から最低賃金の金額を時給100円下回ってしまっていました、という風になりますと、何年後かにその金額が積み重なったもの、これをまとめて支払わないといけなくなる、とかそういったリスクもございますので是非ご注意ください。

② 罰金

 

また、もう一つですね、「罰金」。これも分かりやすいものでして、この最低賃金の制度に違反して安い賃金しか払ってなかったという方にはそれぞれ罰金刑がございまして、地域別最低賃金違反では50万円以下、特定最低賃金の違反では30万円以下の罰金と、こういったペナルティがございます。

今回の動画では最低賃金制度について簡単にご説明いたしました。労働問題、これについても労働者側、あるいは労働者を雇ってる側(「使用者」と言います)、どちらにとっても非常に深刻な問題になりますので、是非お困りの方はまずは弁護士にご相談ください。

著者プロフィール


田代隼一郎 弁護士

おくだ総合法律事務所
平成24年弁護士登録
福岡県弁護士会所属
熊本県熊本市出身
真和高校卒
九州大学法学部卒
大阪大学大学院高等司法研究科修了

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