従業員の解雇は慎重に




会社、使用者側からする従業員の解雇ということについて説明します。
ときおり、中小企業の経営者から、「従業員を解雇したいのだけど、30日前に予告するか、30日分の給料を払って即時解雇すればいいんですよね」と聞かれることがあります。
たしかに、そのような手続きは労働基準法に規定されています(労基20条)

しかし、これとは別に、労働契約法という法律には、「解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当なものであると認められない場合は無効とする」といった規定があります。(労働契約法16条。外に17条)

実は、この規定が大変ハードルが高く、殆どの相談において、このハードルをクリアしていると考えられる例はありません。
すなわち、解雇には、「懲戒解雇」と「(懲戒解雇以外の)普通解雇」がありますが、上記のハードルをクリアしていると思われるのは、懲戒解雇の場合で言えば、会社のお金の横領の例、普通解雇の場合でいえば、会社倒産の場合の解雇、といった例くらいです。

なお、会社が解雇に踏み切った結果、後に、労働者側から労働審判や訴訟など、法的手続きをとられた場合には、解雇が有効と認められるハードルが極めて高いことは前述のとおりですから、①解雇から裁判で解決に至るまで(数ヶ月から1年程度)の給料相当額と、②+αの解決金(合計で数百万円)を支払って和解、ということになることが多いと思います。

ですので、解雇を検討される場合には、是非一度、事前に会社の顧問弁護士などの専門家にご相談されることをお勧めします。

解雇-退職

著者プロフィール


奥田貫介 弁護士

おくだ総合法律事務所 所長
司法修習50期 福岡県弁護士会所属
福岡県立修猷館高校卒
京都大学法学部卒