建物賃貸借契約の期間~よくある誤解の解消




弁護士の奥田です。
今日は「建物賃貸借の期間、よくある誤解の解消」と題してお話をしたいと思います。

契約書上「契約期間2年」とあれば、2年で終了?

大体の建物賃貸借には契約書があります。建物賃貸借契約書には契約期間が、たとえば2年というふうに書いてあります。そうすると、貸している側からすると、契約期間2年と書いてあるから2年経ったら出て行ってもらえる。あるいは、借りている側からすれば2年経ったら出ていかないといけないのか。こういうふうに考える方がおられますけれども、それは原則として正しくない。

どういうことかというと、これは原則として更新されることになります。2年経つとまた更新して2年というふうにどんどん更新されていく。それは賃貸人に更新拒絶の正当な理由がない限りは更新されるということになります。
貸している側に、もう更新しませんよと言う正当な理由、例えば建物が老朽化して崩れそうだとかいった理由がない限りは、どんどん更新されていくということになります。これが原則です。

定期借家契約とは

ただし、これから説明する『定期借家契約』という特別な契約形態であれば別ですよ、ということになります。これは借家法の38条に規定があります。

ここには定期借家契約の要件が書かれていまして、一つは公正証書等の書面による契約が必要です。ここでミソなのは公正証書「等」と書かれている。ということは公正証書じゃなくても書面で契約していればいいということになるわけですから、契約書という形で書面を作ればいいので、ここは大して難しい話ではありません。

それからもう一つは、賃貸人は契約をする時に賃借人に対して「更新がなく、契約の満了により終了する」ことを契約書とは別に、予め書面を交付して説明しないといけないということになります。先ほどの契約書とは別に、更新がなく期間の満了により終了しますよ、ということを説明した書面を相手に渡さないといけませんよということになっています。

定期借家なら、期間満了で終了

この定期借家契約なら、もう期間の満了で終了ということになります。 契約期間2年というふうに書いてあれば、2年でもう終了ということになります。もちろん再契約は可能です。貸す側と借りる側がもう1回契約しましょうねということは全く可能です。ただそれは再契約ですから、今までの賃料でいいですよという形ならいいけれども、いや今までの賃料ではだめだ、もっと安くしてくれとか、高くしてくれとか、そういうところできちんと折り合いがつかないと再契約にはならないので、定期借家契約であれば期間が満了したら借りている側は出ていかないといけないという話になります。

ここで大切なことは、この定期借家契約であれば、期間が満了したら出ていかないといけないということをしっかり理解した上で建物を使ったりしないといけない。商売に使うのであれば内装を綺麗にやり直したとしても、2年経ったら出ていかないといけないことになるわけですから、そのあたりもしっかり考えた上で契約しないといけない。

賃借人からの中途解約

最後に賃借人からの中途解約。これは普通借家でも定期借家の場合でも原則として契約書にどう書いてあるかということになります。
ですので、定期借家契約の場合には、たとえば「賃借人からは2年は解約はできません」というように、解約のことについて何も書いてないことがありますけれども、そうすると2年なら2年ずっといないといけないという形になります。

ただこの定期借家の場合には、床面積200㎡未満の居住用建物の場合には、賃借人の方にやむを得ない事情、例えば、親族の介護だとか、転勤だとか病気になって入院しないといけないとか、そういう事情があれば中途解約が可能だとなっています。これは借地借家法の38条5項に書いてあります。ですので定期借家の場合には、こういう例外がありますけれども、賃借人から中途解約する時には、出て行くのは勝手だろうというふうに思われるかもしれませんけれども、これも基本的には契約書にどう書いてあるかによりますので、契約書をしっかり確認していただければと思います。

本日の話は以上です。

著者プロフィール


奥田貫介 弁護士

おくだ総合法律事務所 所長
司法修習50期 福岡県弁護士会所属
福岡県立修猷館高校卒
京都大学法学部卒