新成人・新一年生が知っておきたい豆知識~学校では教えてくれない




こんにちは弁護士の田代です。
今回の動画では、新成人・新一年生の方を対象とした豆知識について解説したいと思います。

4月1日に18歳の方が成人になられて、それから2か月近くが経ちますが、皆様、いかがお過ごしでしょうか。当時はまだ新しい生活になる直前であまり生活は変わらなかったと思うんですが、今はおそらく大学一年生で一人暮らしをされていたり、社会人一年生で活躍されていたりといった新生活を送られている方がいらっしゃると思います。今回は、そういった方が知っておきたい知識について、解説します。また、そうじゃない方にとっても勉強になることがありますので、ぜひご覧ください。

上の図では、新成人・新一年生が知っておきたい豆知識として、1番から4番までの項目を並べました。①契約の撤回について、②長期の契約の縛りについて、③借金との付き合い方について、④自分が加害者になってしまった場合について。
こういったことを解説していますが、こういう知識は学校で教えてもらってないと思います。

また、ニュースなどでも、18歳が成人になるというので、「これは大変だ」「騙されちゃいけない」「皆さんしっかり勉強して下さい」「お金のことや社会のことを勉強してください」という呼びかけは報道されていますが、具体的にどういう知識が大事なのかということまでは、なかなか解説されていないと思います。そのため、今回は、そういったトラブルに巻き込まれたり、困った立場にならないための知識をご紹介しますので、ぜひ、覚えておいていただきたいと思います。

1 契約の撤回

まずは、契約の撤回について解説します。
一度契約をしてしまうと、未成年者であれば親が取り消すことができるという制度がありますが(上の図の①)、成人であれば原則として撤回できません。これはよくニュースなどでもご覧になられたと思います。

ただ、例外がございまして、成人の契約であっても、例えば、②訪問販売とか電話勧誘での販売といった契約の場合には、8日以内であれば撤回ができるという制度があります。訪問販売・電話勧誘販売というと、なにか遠い世界のような気がすると思いますが、例えば、道端で声をかけられて契約をした場合でも訪問販売になることがよくあります。ほかには、説明会も挙げられます。例えば、ホテルなどの会場で無料の説明会を受けて、その場で契約をしたといったケースでも、訪問販売とされることがよくあります。さらに、電話勧誘販売についても一見遠い世界の話のようですが、例えば、インターネットのZOOM やLINEビデオ通話などで説明を受けて契約をするケースでも電話勧誘販売として、訪問販売のケースと同じように撤回の対象になります。
そのため、こういった時の契約については、8日以内であれば撤回できることがよくあります。

また、これらの①、②以外のケースであっても、勧誘方法によっては契約を撤回できる場合もあります。例えば、8日という期間が過ぎてしまった場合でも、契約の際の書面の記載や手続きに不備があれば、何日後でも撤回できます。さらに、訪問販売や電話勧誘販売でない場合でも、勧誘の仕方に問題があった場合には、撤回・取消しができることもありますので、ぜひ覚えておいてください。
くれぐれも「撤回したいけど諦める」といったことがないように、まずは専門家にご相談いただくことが大切だと思います。

2 長期契約の縛り

次のテーマが長期契約の縛りですが、これは皆さまもお詳しいと思います。
この長期契約にどんなものがあるかというと、アパートやマンションを借りる賃貸、新聞の購読、電話回線が挙げられますが、このあたりについてはあまり身近じゃない方もいらっしゃるかもしれません。しかし、例えば、電話といってもスマートフォンの購入、あるいはインターネットの回線契約などは、新生活にあたって手続きをされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

さらに、サブスクも挙げられます。皆さまもお詳しいと思いますが、例えば、動画を視聴するサービス、音楽を聴くサービス、電子書籍のサービスなどといったサブスクも長期の契約の一例です。

このように、意外と身近な長期の契約ですが、注意点が「縛り」がある契約が多く存在することです。例えば、契約から2年間は縛りがあって解約ができなかったり、解約をしても残りの期間分の利用料は払わないといけなかったりとか、全額でないにしても違約金がかかるケースなどはよくあります。ご注意ください。

あともう一つ。ややこしくて私も時々間違えますが、2年ごとにしか解約できないという縛りも時々あります。そのため、例えばこの4月に契約したケースで、それから2年後の秋ぐらいに解約しようとしたところ、「4月に解約してなかったので、もう2年間待ってください」と解約を拒否されるケースもあります。
そのため、なにかのサービスを解約をする時や、新たに契約をする時には、この辺りの縛りの内容をよくご確認ください。

3 借金との付合い方

次のテーマは借金との付き合い方です。
借金というと「自分は関係ないや」「ここはちょっと飛ばそう」と思われた方もいるかもしれませんが、そういう方こそご注意ください。
借金というのは意外と身近にあります。例えば、誰かに借用書を書いてお金を借りたり、誰かから現金をその場で受け取るといったケース以外にも、例えば、携帯電話の利用料などであっても、期限内に払わなければ借金になると考えてください。あるいは、クレジットカードを利用したショッピングや、特にリボ払いなどは、わりと利息の高い借金になります。あるいは、ローンでの買い物なども含めて、成人の方は大抵の方が借金されています。そのため、自分も絶対に借金をすると思ってこの話を聞いていただきたいと思います。

借金は、基本的には自分しか責任を負いません。そのため、返済に困っている時に「家族に請求が行くんじゃないか」と心配をされる方もいるかもしれませんが、基本は本人しか請求されません。
例外は、保証人です。この言葉を聞いたことある方も多いと思いますが、保証人になると、本人と同じように借金について責任を負わないといけません。そのため、頼まれても保証人にはならないように気をつけてください。私も学生の頃に保証人になってくれと言われたことがありますが、その時も断っております。

次に、返済に困った時の話ですが、まず、借金の強引な取り立ては出来ません。もし、強引に取り立てようとする場合には、基本的には、裁判することしかできません。例えば、無理やり家に来て借金のカタとして物を持ち去るだとか、本人以外の家族や知り合いの所に取り立てに行くとか、そういう行動は借金の取り立てというよりも、カツアゲ(恐喝)のような違法行為だと考えてご対応いただければと思います。そのため、それに応じることは、カツアゲ被害に遭って不合理にお金を払うことと大して変わりませんので、そこは毅然と切り離して考えてください。

他に借金に困った時ですが、もう返せないとなった時にも、日本には債務整理という制度がございます。例えば、民事再生だとか破産だとかそういった制度を利用すれば、借金の全部や一部を免責してもらうこともできます。そのため、まずは思い詰める前に専門家にご相談いただければと思います。

この時の注意点の一つは、破産についてはギャンブルや浪費のための借金については厳しく見られます。ただ、そのような場合でも民事再生などで対応できる場合もありますので、それも含めてご相談下さい。

もう一つの注意点は、「信用情報」というものがありまして、例えば破産などの債務整理をしたり、あるいはずっと滞納を続けたりすると、信用情報に登録されます。この信用情報というのは、例えばインターネットで公表されたりするものではありませんが、金融機関が情報共有することになります。そのため、信用情報に登録されると、新しくクレジットカードを作ったり、お金を借りようとするときなどに、「あなたには今はお貸しできません」と断られるリスクがあるため、この点は気をつけてください。

4 加害者になった場合

最後のテーマは、自分が何かの加害者になった場合についての対応です。
加害者の例としては、誰かに怪我をさせたり、誰かの物を壊してしまったといった場合が挙げられます。こうなると心配される方が沢山いますが、こういった場合であっても、保険で解決できることが意外とよくあります。自身では保険に加入していない方でも、両親が加入している保険が一人暮らしの子どもにも使用できたり、両親さえも加入したつもりがない保険(例えば、クレジットカードを作った時にいつのまにか加入していた、あるいは入学の時に色々書類をバタバタと書いてるうちにいつのまにか加入していた)が使用できることもよくあります。

ただ、注意点として、「報告」が重要になります。例えば、保険についても、トラブルがあった時には速やかに保険会社に報告する必要があり、ずっと後になって報告をしてもそれは対応できませんと拒否されることもあります。また、保険の問題だけではなく、例えば交通事故で人に怪我をさせてしまった時に、110番や119番などの必要な報告を怠ると、一つの犯罪という扱いになることもあります。実際に、交通事故で人を怪我させて何もせずに立ち去ったことで、正式な刑事裁判 (裁判所で刑事被告人として罪に問われ、判決を受ける制度)になってしまうことが沢山あります。そのため、トラブルがあった際に報告する必要があることは、よくよくご注意ください。

以上、今回は、新成人・新一年生が知っておきたい豆知識を解説しました。最後に総括しますと、トラブルになっても「なんとかなる」ことが多くあります。そのため、大事なことは、とにかく一人で抱え込まないことです。両親をはじめとした身近な方に相談されるとか、両親に相談しにくい場合でも、インターネットで弁護士を検索して相談されるといいと思います。相談料などは事前に質問いただければお伝えできますので、とにかく抱え込まないことを心がけてください。

著者プロフィール


田代隼一郎 弁護士

おくだ総合法律事務所
平成24年弁護士登録
福岡県弁護士会所属
熊本県熊本市出身
真和高校卒
九州大学法学部卒
大阪大学大学院高等司法研究科修了

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