株主総会の準備(1)招集通知の作成・発送から議事進行の準備まで

こんにちは、弁護士の奥田です。

今日は「株主総会の準備(1)」ということで、招集通知の作成・発送から議事進行の準備までについてお話をしたいと思います。

株主総会、ここで想定しているのは、上場会社ではない、中小の会社の株主総会。小さな会社の場合には株主総会と言っても、そもそもやってない、あるいは、1年に1回株主のみんなで食事をして、適当にちょっとお話をして議事録だけ作るとか、そういった会社も多いように感じています。

特に揉めない話であればそういうものでもいいのかもしれませんが、混乱が予想されるような場合、今までの取締役を解任したりとか、あるいは選任しないというふうにしたりとか、あるいは新たな取締役を入れるとか、そういった場合で、一部株主の反発が予想されるような場合、こういった場合を念頭に置いて説明をしたいと思います。

多数派工作

まず初めに、多数派工作。「多数派工作」というと何か聞こえが悪いですけれども、要は株主総会では一定の決議を取りたいわけですから、きちんと決議が法律上成立するような”定足数”(つまり株主総会が成立するためには、議決権を有する株主の過半数が出席することが必要だとか、そういった定足数)というのが決まっていますし、それから”可決要件”ですね。そういう必要な株数を持った株主が集まった上で、可決要件というのは、その出席の株主の議決権総数の過半数が賛成すること、とか、そういった可決要件が必要になります。
ですので、こういった定足数・可決要件を満たすだけの株式を有する株主からの協力の確保。これがまず第一に必要ということになります。

それで「いいよ」というふうに言われて、当日頼みますね、ということだけでいいのかというと、やっぱりそこもリスクを考えて、例えば当日その方が急病で来られないとか、あるいは電車が止まったとか、事故に遭ったとか、そういうことも考えられるわけですから、きちんと出席してもらえるように。それから、もし事故があった場合には、その方が来られなくても大丈夫なように、委任状をあらかじめもらっておくとか、そういった準備も必要になってくるというふうに思います。

招集手続の確認

それから、招集手続き、これをどうするのかということをきちんと確認しておく必要があります。
まず、株主総会を開きますよ、いついつどこどこに集まってくださいという招集をする『招集権者』が一体誰なのかということを、定款などできちんと確認をしておくということになります。通常は代表取締役社長がやるというふうになっていることが多いかと思います。

それから『招集通知の内容』ですね。招集通知の中に予定されている議題議案を記載しておくべきなのかどうか。
それから、『方式』ですね。口頭で招集ということでいいのか、それとも書面を出しておく必要があるのか、あるいはメールでいいのか。そういったこともまず確認をしておく必要がある。

それから『期限』ですね。株主総会の何日前までに発送しないといけないのか。
こういったようなことを定款、それから会社法でもって確認をして、それで招集通知の内容を作成するということになります。

それから『招集通知の発送先』ですね。これをどこにするのか。通常は会社には株主名簿というものがきちんと備え付けられているはずですから、この株主名簿記載の住所に発送すればいい、ということになってるんですけれども、株主名簿をきちんと整備していないとか、あるいは何か所在不明の大株主がいるとか、あるいはこの方は最近亡くなったとかですね。そういった場合にどうするのか、誰に発送するのかということをきちんと検討する必要があるということになります。

議事進行シナリオの準備

それから、当日までに議事進行のシナリオを準備しておく必要があります。その中でまず大事なことは、誰が議長として株主総会を進行させていくのかということを確認する必要があります。これは通常、定款に書いてあったりします。この、”誰が議長となるのか”ということ。ここは実は皆さんあまり意識されませんけれども、非常に大切なことになります。

株主総会という会議を主催するのは、議長ということになります。この議長が「はい株主総会これから始めます」と言ったら株主総会が始まりますし、それから「株主総会終わります」というふうに言えば、原則そこで株主総会は終わっちゃうということになりますので、そういった意味でも、議長というのは非常に重要な、あるいは重大な権限を持ってる、ということになりますので、誰が議長となるのかということを確認する。

それから、シナリオを作成しておく。議長が最初に、「定刻となりましたので、株式会社〇〇の定時株主総会を始めます。」とか言うことをシナリオに書いておいて、誰が何と言おうとそのシナリオ通りに進めれば所定の決議が得られる、といった準備。ここをきちんとしておくことが必要だというふうに思います。

議事録の準備と登記申請の準備

それから最後になりましたけれども、「議事録の準備と登記申請の準備」ということになります。
逆に言えば、どういう議事録を作りたい、ということがまず最初にあって、その議事録の作成を目指して株主総会の準備を進めるという発想なんですけれども、まずどういう議事録を作成したいのかということをあらかじめ準備しておきます。

実際の議事録というのは、株主総会が終わった後にすぐ印鑑を押すということになるわけですけれども、この議事録の作成のために株主総会をやると言っても過言ではないことになります。
この議事録というのはきちんと作成をして、それから会社の本店なんかに備え置くことが必要ですよ、というふうに会社法で規定をされていますので、きちんとしたものを作って、それからこれは株主からの請求があれば閲覧させないといけないとかですね、そういうふうにもなってますので議事録を準備しておく。

それから、決議事項が登記事項の場合、結構揉める可能性があるような、例えば取締役の選任だとか解任だとかについては、きちんと登記をしないといけませんから、こういう議事録でもって法務局が受け付けてくれて法務局がその通りの登記をしてくれるのかどうか、これをあらかじめ、場合によっては司法書士の先生の協力も得ながら確認しておくことが必要ということになります。

ですので、こういった準備をきちんとして、特に揉めることが予想されるような場合にはきちんと準備をして臨む、ということが必要かなと思います。
今日の話は以上です。

著者プロフィール


奥田貫介 弁護士

おくだ総合法律事務所 所長
司法修習50期 福岡県弁護士会所属
福岡県立修猷館高校卒
京都大学法学部卒

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