フレックスタイム制の活用

フレックスタイム制度

ワークライフバランスが重視されるようになってきた昨今、出退勤を労働者が自由にできるフレックスタイム制度も活用されるようになってきました。今回は、フレックスタイムを導入するまでの流れと、留意点を説明していきたいと思います。

フレックスタイムとは

まずはフレックスタイムについて軽く説明しておきます。フレックスタイムとは、図のとおり、必ず労働するコアタイム、いつ労働するかを労働者の選択にゆだねるフレキシブルタイムの二つに分け、コアタイムさえ守れば、いつ出勤して退勤するかを労働者側が決めることができる制度になります。一般的な働き方に比べて、労働者個人個人に合った働き方を選ぶことができるということですね。

フレックスタイムの導入

フレックスタイムを実際に導入する際の流れですが、①就業規則にフレックスタイムに関する規定を設け、②会社と労働者の過半数代表者とがフレックスタイムを導入することについて労使協定を締結すること、が必要になります。
具体的な就業規則及び労使協定の定め方につきましては、以下に記載例を掲載しておりますので、ご参考いただけますと幸いです。

就業規則記載例

就業規則例記載例(word文書をダウンロードできます)

労使協定記載例

フレックスタイム制に関する労使協定書(word文書をダウンロードできます)

フレックスタイムを導入するに当たっての留意点

実際にフレックスタイムを導入する場合、留意点としては、①労働者によって出勤している時間が異なること、②フレキシブルタイムにおいて、労働者に出勤することを強制できないこと、③賃金の計算方法が一般的なものと異なること、の3点が主に挙げられます。

1つ目の留意点は、端的に申し上げますと、取引先、会社内部の連絡が難しくなることがあるという点ですね。コア時間を除けばいつ会社にいるか分からないわけですから、日常的な連絡にも制限が生じることは勿論、緊急の要件の際に即時に対応することが難しくなるという懸念があります。

2つ目の留意点は、会社側からフレキシブルタイム中の出勤命令ができなくなるという点です。フレキシブルタイムにおいては労働者が選択権を有するわけですから、例えば取引先との会議がフレキシブルタイム中にしか都合がつかないという場合でも、最終的には出勤時間を選択するのは労働者側になります。会社としてはあくまでお願いという形で労働者に提案する他なく、業務命令として出社を強制することはできませんので、実際に会社が命じた出勤時間に出社しなかったことを理由として、懲戒する、ということ等は基本的にできなくなるわけです。出勤・退勤時間を労働者に委ねることがフレックスタイム制の本質ですので、このような懸念を抱えることになることは念頭においた方がよいでしょう。

3つ目の留意点ですが、賃金の計算方法が通常の就業形態と異なるという点です。一般的には、労働者の賃金は一日の就業時間が決められていて、一日8時間、週40時間を超える場合には割増賃金となる、という1日、1週間という期間が基準になっているかと思います。一方で、フレックスタイム制度においては、所定の期間全期間において定めた労働時間を超過した場合に初めて、割増賃金を支払う必要が生じます。

例えばある週は毎日10時間ずつ、5日間労働したとしても、他の週で調整して、月160時間に収まる場合には、割増賃金は発生しません。労働時間の長短が時期によって変動するような職場の場合ですと、会社側としても導入に際してのメリットは少なくないかと思います。

フレックスタイム制の活用

フレックスタイムを導入するに際しては一般的な就業方法と違いますので、心理的なハードルも含めて気にはなるけども躊躇されていらっしゃる方もおられるかと思います。しかしながら、業種や会社の風土によってはフレックスタイムの方がよく馴染むということも考えられますし、労働者が就業先を選択する上で、フレックスタイム制度があるというのは魅力的なポイントになるかと思います。
具体的に導入しようという会社の方も勿論、うちの会社はフレックスタイムを導入するのが適当か不適当か判断しかねているという場合でも、一度ご相談いただければお力になれるかと思います。

著者プロフィール


田中大地 弁護士

おくだ総合法律事務所
司法修習74期
福岡県弁護士会所属
福岡県立修猷館高等学校卒
九州大学法学部卒
九州大学法科大学院修了

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