少数株主が会社の経営状況(不正?)を確認する方法(計算書類・会計帳簿の閲覧謄写)




 

こんにちは弁護士の奥田です。
今日は、少数株主が会社の経営状況、もっと言えば社長が不正をしてるんじゃないかなどを確認する方法についてお話をしたいと思います。

少数株主が会社の経営状況(不正?)を確認する方法

 ①計算書類(貸借対照表・損益計算書など)
 ②会計帳簿(総勘定元帳)、資料(伝票・契約書など)
 の閲覧・謄写

具体的にはまずこの①と②ですね。計算書類と会計帳簿の閲覧・謄写(コピー)。
計算書類は貸借対照表や損益計算書などです。通常会社において作られた決算書と言われるようなものです。こういった会社の基本的な経営状況を示す書類を閲覧・謄写ができます。

それから会計帳簿ですね。会計帳簿というのはもっと細い仕様です。色々なそれぞれの取引を記帳してある帳簿、それからこれに関する資料、伝票だとか契約書だとかこういったものも閲覧・謄写ができますよ、となっています。

詳しく見ていきたいと思います 。

①計算書類(貸借対照表・損益計算書など)

会社法

第四百四十二条 (計算書類等の備置き及び閲覧等)
3 株主及び債権者は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。ただし、第二号又は第四号に掲げる請求をするには、当該株式会社の定めた費用を支払わなければならない。
一 計算書類等が書面をもって作成されているときは、当該書面又は当該書面の写しの閲覧の請求
二 前号の書面の謄本又は抄本の交付の請求
三 計算書類等が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求
四 前号の電磁的記録に記録された事項を電磁的方法であって株式会社の定めたものにより提供することの請求又はその事項を記載した書面の交付の請求

4 株式会社の親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、当該株式会社の計算書類等について前項各号に掲げる請求をすることができる。ただし、同項第二号又は第四号に掲げる請求をするには、当該株式会社の定めた費用を支払わなければならない。

まず計算書類です。貸借対照表・損益計算書、BS・ PL などと呼ばれるいわゆる決算書です。こういったものについては会社法の442条に規定がありまして、その3項です。
3 株主及び債権者は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
ここに「株主」と書いてますから一株でも株を持ってればそういうことができるということになります。
後で説明する会計帳簿の場合と違って、理由も別に明らかにしなくていいということになっています。

一 計算書類等が書面をもって作成されているときは、当該書面又は当該書面の写しの閲覧の請求。
見せろということですね。

それから二号では、
二 前号の書面の謄本又は抄本の交付の請求
謄本というのはコピーですね。抄本というのは一部のコピーということで、これをよこせ、と、請求ができる、ということになっています。

三号・四号、これは電子データで作成・保管されている時にも同じようにできますよということになります。

ですので株主、一株でも株を持っていれば計算書類は取得できるということになるわけです。

②会計帳簿(総勘定元帳)、資料(伝票・契約書など)

会社法

第四百三十三条 (会計帳簿の閲覧等の請求)
総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主又は発行済株式(自己株式を除く。)の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を有する株主は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。
一 会計帳簿又はこれに関する資料が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
二 会計帳簿又はこれに関する資料が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求

2 前項の請求があったときは、株式会社は、次のいずれかに該当すると認められる場合を除き、これを拒むことができない。
一 当該請求を行う株主(以下この項において「請求者」という。)がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。
二 請求者が当該株式会社の業務の遂行を妨げ、株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。
三 請求者が当該株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものであるとき。
四 請求者が会計帳簿又はこれに関する資料の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求したとき。
五 請求者が、過去二年以内において、会計帳簿又はこれに関する資料の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき。
3 株式会社の親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、会計帳簿又はこれに関する資料について第一項各号に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。
4 前項の親会社社員について第二項各号のいずれかに規定する事由があるときは、裁判所は、前項の許可をすることができない。

次は、会計帳簿についてです。
会計帳簿というのは計算書類よりもっと細い書類になります。日々のいろいろな取引について記帳されている帳簿です。それからそれに関する資料、伝票や契約書などです。こういったものについての閲覧・謄写の請求ができます。会社法の433条に書いてあります。

総株主の議決権の百分の三以上の議決権を有する株主又は発行済株式の百分の三以上の数の株式を有する株主

ちょっと難しく書いていますけれども、大雑把に言えば3%の株を持っていればそういう請求ができます。この3%というのは自分一人じゃなくても、誰か賛同してくれる他の株主2~3人とか4~5人合わせて3%をクリアしていればこの請求ができるということになります。

計算書類は一株でもよかったわけですけれども、今回は株の割合が要件となっていますが、100分の3ですから中小企業などでは結構楽にクリアできることが多いのかなと思います。
この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。
この場合は、当該請求の理由を明らかにしないといけないということになります。どういうわけでこの会計帳簿の閲覧請求をするんですか、という理由を明らかにして会社に請求しないといけないということになっています。理由を明らかにすると、
一 会計帳簿又はこれに関する資料が書面をもって作成されているとき  は、当該書面の閲覧又は謄写の請求
会計帳簿またこれに関する資料について閲覧又は謄写、閲覧というのは見せてくれ、謄写というのはコピーをさせろと、こういう請求ができますよ
二号はデータで作成・保管されている場合も同じようなことができますよ、ということになっています。

ただ会社側として拒める場合があるんですね。
2 前項の請求があったときは、株式会社は、次のいずれかに該当すると認められる場合を除き、これを拒むことができない。
ということで、一号から五号までありますけれども、こういった場合は拒むことができる。だからちゃんと理由を示して請求しないといけないということになってるわけです。

まず一番目。
一 当該請求を行う株主(以下この項において「請求者」という。)が その権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。
ということですけれども、例えば株主が代表取締役が不正行為をしていて、会社の犠牲の上に私腹を肥やしている恐れがある、といったような場合には、取締役の解任だとかそういった権利というものがありますので、こういう調査のためにやるんだということであれば、請求側からすればここはクリアできるということになります。

それから二号は、
二 請求者が当該株式会社の業務の遂行を妨げ、株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。

つまり業務妨害、嫌がらせ目的ですね。こういう場合はだめですよということです。

それから三号です。
三 請求者が当該株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものであるとき。

その株主が競争関係にある事業を営んでるような時です。その株主が商売敵である、こういう場合にはその商売敵の商売に使われる可能性があるわけですから、こういう場合にはだめですよということが会社から言えるということです。

それから四号。
四 請求者が会計帳簿又はこれに関する資料の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求したとき。
五号。
五 請求者が、過去二年以内において、会計帳簿又はこれに関する資料の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき。
このような場合は閲覧・謄写はできませんよ、となっています。

ですので、逆にこの一号から五号に当たらない場合には会社は拒むことができないわけですから、株主としては結構詳細なデータを得ることができるということになっています。

過半数株主が会社を支配し、好き放題やられてる。例えば関係する会社を社長が作ってそちらの方に不正に利益を流しているだとか、そういったような場合がたまに見られますけれども、そういう恐れがある場合には、特に中小企業の過半数持っていない株主は、こういった会計帳簿・計算書類の閲覧・謄写をすることによってその会社の動き、もっと言えば代表取締役の不正な動きを確認することができて、次の権利行使ができるといったようなことになります。
ですので、これは中小企業の少数株主にとっては非常に大きな武器になり得ると思いますので、そういった場合にはぜひ弁護士などの専門家にご相談されて適切な権利行使につなげていただければというふうに思います。

今日のお話は以上です 。

著者プロフィール


奥田貫介 弁護士

おくだ総合法律事務所 所長
司法修習50期 福岡県弁護士会所属
福岡県立修猷館高校卒
京都大学法学部卒