「時効」の制度には、民事法上のものとして「取得時効」と「消滅時効」があることを以前ご説明しました。いずれの「時効」も、ある時を起点として、そこから法の定める期間が経過したことをもって、権利の取得、喪失という効果を生じさせるものでした。
そうすると、いったん時効期間が進行し始めたら、すなわち、ひとたび時効の完成に向けて時計の針が進みはじめたら、その進行を止めることは一切できないのかというとそうではなく、進行している時計をリセットしたり(時効の中断)、時計の針を一時的にストップさせたり(時効の停止)、ということができる場合があります。
それでは、どのような場合に、この時効の「中断」と「停止」が認められるのでしょうか。

1、消滅時効について

まず、消滅時効の中断にあたる事由のうち典型的なものを挙げると、「請求(民法147条1号)」と「承認(民法147条3号)」というものがあります。
「請求」とは、たとえば、お金を貸した相手がいつまでたってもお金を返してくれないため、貸主がその支払いを請求する訴訟を提起したような場合です。なお、訴訟提起のように裁判所を利用することなく、相手方に手紙等で直接お金を返すよう請求(催告)することも、意味がないわけではないのですが、これによって完全に時効を中断することはできず、催告から6ヶ月以内に訴訟を提起する等の手段を採る必要があります。

「承認」とは、お金を借りている人が「100万円を借りています」と認める行為のことを意味します。借主が、手紙等でその旨を伝えた場合はもちろん、100万円のうち10万円を支払った時(一部弁済)や、来月末まで待ってくれ、と支払猶予を求めた時も、黙示的な「承認」をしたものとして、時効の中断事由となると考えられています。

「請求」や「承認」によって、時計の針はリセットされ、中断事由が終了した時からまた新たな時効が進行していくことになります。つまり、10年で消滅時効が完成する通常の貸金債権があった場合において、弁済期から9年が経過したところで、借主が借金の一部を返済したとすると、その時点で9年が経過していた時計の針はリセットとなり、また新たな時効がゼロから進行していくことになります。

次に、消滅時効の停止とは、あと少しで時効が完成するという時になって、時効の中断(請求、承認等)をすることが困難な事情がある場合に、その期間だけ時効期間に算入しないようにする制度のことをいいます。時効の中断のように振り出しに戻るのではなく、期間の進行が一時的にストップするにすぎません。
どのような場合が停止事由にあたるかは、一般的なものとして「天災その他避けることのできない事変」が生じた場合、が挙げられます。また、相続に関する権利の時効との関係では、相続財産を管理する者がいないという場合も停止事由にあたるとされます。

2、取得時効について

取得時効の場合も、消滅時効と同様に「請求」や「承認」によって時効が中断します。さらに、取得時効の場合、事実状態としての占有が途切れることも、時効の中断事由となります。つまり、取得時効というのは「亡父から相続した土地に建物を建てて10年間住んできたが、実はその土地は亡父が所有していたものではなく、他人の土地であった」という場合に、その土地の所有権を取得することができる、という制度であるところ、住んでいた建物が震災で崩壊したために、他所に引っ越して、空き地となった当該土地はそのまま放置していた(=土地の占有を失っている状態)ということが、時効の中断事由となりうるのです。
取得時効の停止は、消滅時効の場合と同様に考えることができます。

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