私は、現在、大学の客員准教授として、歯学部の学生に講義をしています。
その中で、毎年、歯科医師の研鑽(けんさん)義務にふれた次の判例についてお話しています。事案の概要は次のとおり。
【事例】
Xは、Y歯科医院(一般開業医)で抜歯治療を受け、その際、鎮痛消炎剤「L」の投与を受けた。なお、Xは、診察前、予診録に「ぜんそく」である旨は記載したが、自らが、「アスピリン喘息」(『L』などの消炎鎮痛剤によって誘発される喘息)であることは知らず、当然、その旨は告げなかった。
治療後、Xはアスピリン喘息発作を起こし、死亡した。
Xの遺族が、慰謝料等の損害賠償を求めてYを提訴した。

問題となったのは、当時、Yのみならず、Y歯科医院が所在するZ市内の開業歯科医師の間では、「アスピリン喘息」という病気の存在が一般的にあまり知られていなかったことです。

それでも、裁判所は、「L」の使用説明書にアスピリン喘息患者には禁忌であること、気管支喘息のある患者には慎重投与すべきこと、文献請求先として製薬会社医薬情報部の記載があること、当時の文献でアスピリン喘息について記載されたものがあること、等を指摘したうえ、医師が投薬する際には、「予め当該薬剤に関する知識を当時の最先端に及ぶ範囲のものまで、薬剤に添付されている使用説明書にとどまらず他の医学文献等あらゆる手段を駆使して修得しておかなければならない」として、医師の義務違反による賠償責任を認めました。

医師たる者、常に勉強していなければならない、知らなかったではすまされない、ということなのです。
しかし、これは考えてみれば、医師にとっては極めて厳しい義務といえます。つまり、科学、医学は日進月歩で、薬の種類も、また、医学的知識も毎年等比級数的に増大しているのに、医師は、つねに文献にあたるなどしてフォローしておかなければならない、ということです(実際、上記判決には、医療現場を知らなすぎるとの批判もあるようです。なお、余談ですが、裁判上、医師の義務違反が問題となる場面で、「文献」に記載があれば、これに反する行為については、比較的容易に過失が認定される傾向があるように思います)。

判例は、平成2年の事案ですが、現在では、私が講義で「アスピリン喘息を知っているか」「『L』がアスピリン喘息患者に禁忌だということを知っているか」と問うと、ほとんどの者の手が挙がります。

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