日常業務の中で取引を行う際、いつも決まった販売先に特定の商品を継続的に販売し、納入場所や代金の支払方法も同じであることが多いのではないかと思います。その際に売買契約をその都度締結しなければならないとなると双方に負担となってしまいます。こんな時に適用されるのが「継続的取引基本契約」です。

個々の取引についてその都度結ばれる契約は「個別契約」とよばれます。これに対し、契約当事者間において何回も同じような取引が反復継続する場合に、取引に共通して適用される条件をあらかじめ定めておく契約は、「継続的取引基本契約」とよばれます。

「継続的取引基本契約」で定める条項には、(1)目的・適用範囲、(2)「個別契約」の成立、(3)納品や支払時期、方法、(4)契約期間、(5)「継続的取引基本契約」の終了のほか様々なものがあります。

例えば「仕入先は○○(商品)△△個を□月□日までに引き渡す、代金××円は仕入先の銀行口座に送金する」という契約を結んだとします。このような契約は、個々の取引についてその都度締結される契約で、「個別契約」とよばれます。

上記の例にあげた契約を毎月継続したい場合は、「商品の納入は毎月末締めで、代金は翌月末までに仕入先が指定する銀行口座に送金する」という契約を結んでおけば、商品の発注ごとに様々な取引条件を定める手間を省くことができますし、安定的な取引関係を築くことができます。
このように、契約当事者間において何回も同じような取引が反復継続する場合に、取引に共通して適用される条件をあらかじめ定めておく契約は「継続的取引基本契約」とよばれます。
「継続的取引基本契約書」は、通常「販売側(売主)」が作成することが多いと思いますが、せっかく作成するのであれば、次のような条項を入れておくと便利です。

1、連帯保証条項

これを入れておき、かつ、連帯保証人(通常、買主の会社の社長など)に署名捺印してもらうことで、万一、代金を支払ってもらえないときには、連帯保証人への請求が可能になります。逆に言えば、この連帯保証条項がなければ社長個人には1円の請求もできないのです。

2、期限の利益喪失条項

たとえば、「買主の会社が不渡りを出したとき等には売主は未払代金の全額を請求できる」というような条項です。
支払条件が「毎月末日締め、翌月末払い」となっている場合には、買主が不渡りを出しても、代金は翌月末を待たなければ請求できないのが原則ですが、この条項があれば、直ちに請求して仮差押などの法的手段をとることができます。

なお、「継続的取引基本契約」の条項は、原則として当事者が自由に決めることができますが内容によっては有効かどうかが問題となることがあります。

例えば、ある化粧品メーカーの商品について、小売店に対し、販売方法を義務付ける条項や、特定の業者に転売することを禁止する条項が定められていた場合、こうした条項に違反することを理由に「継続的取引基本契約」を解除することができるかが問題になったことがありました。この事案では、裁判所は「継続的取引基本契約」の解除を認めていますが、他の事案でも同様に判断されるとは限りません。

このような問題もありますが、自社の法的利益をきちんと確保しておくためにも、これまで「継続的取引基本契約書」を作成していなかった場合はもちろん、昔から使ってきた「継続的取引基本契約書」を漫然と利用している場合には、この機会に是非しっかりと検討しておくのが良いと思います。

著者・弁護士 奥田 貫介

最終更新日:2018/10/18

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