不動産売買にあたっては、買主から売主に対して手付金が支払われるのが通常です。手付金の額としては、売買代金額の5〜10%程度が相場とされますが、不動産業者が売主となっている場合か否か、新築か中古か等の事情によって、多少異なってきます。

手付金として支払われる金銭にもは、厳密に言えば「証約手付」、「解約手付」、「違約手付」の3種類があります。簡単に言えば、「証約手付」は契約成立の証として交付される手付金、「解約手付」は、買主は手付金を放棄することによって契約を解除できる、というように、契約の解除権を留保する目的で交付される手付金、「違約手付」は違約があった場合には没収するという意味をもつ手付金です。特にどの意味での手付金かが表示されていない場合には、「解約手付」であると推定されます。

なお、厳密に言えば、手付金は、売買金額の一部として支払われるいわゆる内金とは異なります。したがって、本来であれば、最終的に売買代金の支払いがなされる段階では、いったん手付金を買主へ返還し、改めて売買代金の全額を買主から売主へ支払う、というプロセスを経るべきことになります。
しかし、そのような手続きをとることは煩雑となりますので、実際には、支払われた手付金を売買代金の一部に当て、残りの売買代金を支払う、という扱いがなされる場合が多いでしょう。そのため、売買契約書に「手付金は、残代金支払いの際に売買代金の一部に充当する」等の記載がなされるのです。

さて、実際に手付金が関連してトラブルとなるのは、やはり、契約解除がなされる場面です。上述のとおり、「解約手付」として手付金を支払った買主は、支払った手付金を放棄することにより、契約を解除することができますが、それも、相手方が契約の履行に着手するまでの間の話です。
実際に建築工事が開始したり、目的不動産が買主に引き渡されたりした後には、手付解除はできませんので注意が必要です。
もっとも、「契約の履行に着手」したか否かの判断は難しいところですので、ご自身で判断してしまうのではなく、できるだけ早く、ご相談ください。