Q.洋菓子店を株式会社にして経営してきました。しかし、知合いの老舗の和菓子店では後継者不足で困っていると聞いて、洋菓子だけの事業では将来が不安になってきました。より簡単に事業を多角化するには、どのようにすればよいでしょうか。

A.会社が新しい事業に進出して経営の多角化を図る場合、新しい事業での人材やノウハウなどを獲得するには時間がかかります。そこで、より簡単に新しい事業に進出する方法として、合併や買収などによる方法(Mergers and Acquisitions、M&A)が考えられます。

M&Aには、「事業譲渡」、「吸収合併」、「吸収分割」、「株式交換」などがあります。

例えば、洋菓子店が和菓子事業に進出する場合、別の会社が経営している和菓子店の店舗、従業員、ノウハウなど事業の一部又は全部を譲り受ける「事業譲渡」が考えられます。このほか、洋菓子店を経営している会社に和菓子店を経営している会社が一緒になって、和菓子店を経営していた会社がなくなる「吸収合併」の方法などが考えられます。

「買収」によくない印象を持つ方もいらっしゃいますが、より早く新しい事業に進出したり、成功しているのに後継者がいない事業を継続したりと、中小企業にとってもM&Aを活用することは十分に考えられます。
M&Aには、法務・財務・税務など様々な面から検討する必要がありますから、お気軽に弁護士にご相談ください。

1 M&Aとは

M&Aとは、合併や買収などによる方法(Mergers and Acquisitions)のことをいいます。
会社が新しい事業に進出して経営の多角化を図る場合、新しい事業での人材やノウハウなどを獲得するには時間がかかります。しかし、より簡単に新しい事業に進出する方法として、M&Aを活用することが考えられます。

2 M&Aの種類

M&Aには、「事業譲渡」、「吸収合併」、「吸収分割」、「株式交換」などがあります。

(1)事業譲渡

「事業譲渡」とは、一定の営業目的のために組織化され有機的一体として機能する財産(得意先関係等の経済的価値のある事実関係を含む。)の全部または重要な一部を譲渡し、これによって譲渡会社がその財産によって営んでいた営業的活動の全部または重要な一部を譲受人に受け継がせるものです。「事業譲渡」では、事業を譲渡した会社が同一の事業を行うことができない義務を負うことになります。

洋菓子店が和菓子事業に進出する場合、別の会社が経営している和菓子店の店舗、従業員、ノウハウなど事業の一部又は全部を譲り受けることが「事業譲渡」です。

(2)吸収合併

「吸収合併」とは、会社が他の会社とする合併で、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承継させるものをいいます。「吸収合併」は、「事業譲渡」とは異なり、財産の一部を除外することはできません。

洋菓子店が和菓子事業に進出する場合、洋菓子店を経営している会社に和菓子店を経営している会社が一緒になって、和菓子店を経営していた会社がなくなる場合が「吸収合併」です。

(3)吸収分割

「吸収分割」とは、株式会社などがその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を包括的に他の会社に移転することをいいます。「吸収分割」では、「事業譲渡」のように店舗などについて個別の移転手続は必要ありませんし、「吸収合併」とは異なり事業を移転した会社も存続します。

洋菓子店が和菓子事業に進出する場合、洋菓子店を経営している会社が和菓子店を経営している会社から和菓子事業を丸ごと受け継ぎ、和菓子店を経営している会社も存続する場合が「吸収分割」です。

(4)株式交換

「株式交換」とは、株式会社がその発行済株式の全部を他の株式会社などに取得させることをいいます。「株式交換」は、「株式」の取得により会社を支配することができるようになるもので、店舗など資産が移動するわけではありません。

洋菓子店が和菓子事業に進出する場合、洋菓子店を経営している会社が和菓子店を経営している会社と「株式交換」をして、同社を100%子会社としてしまうのです。

  メリット デメリット
事業譲渡 事業の一部除外OK
譲渡会社は存続
個々の財産ごとに移転手続が必要
従業員の同意が必要
吸収合併 個々の財産の移転手続不要 財産の一部除外NG
吸収会社は解散・消滅
吸収分割 個々の財産の移転手続不要
事業の一部除外OK
分割会社は存続
従業員の異議制度あり
株式交換 親会社・子会社として存続
→経営の効率化
株主の構成が変わる

3 「M&A」のご相談

「買収」と聞くと、「買収される会社は業績がよくないのでは?」とか「買収する会社はずるい!」といったように、よくない印象を持つ方もいらっしゃいます。しかし「M&A」には、成功しているのに後継者がいない事業を継続したり、より早く効率的に新しい事業に進出したりというメリットがありますから、中小企業にとっても「M&A」を活用することは十分に考えられます。

しかし、合併や買収がよくないという印象をお持ちになる方もいらっしゃいますから、会社の業績に影響を与えないよう情報の守秘を徹底する必要があります。そして、勤め先が変わることになる従業員の雇用についても配慮する必要がありますし、業界や相手方の経済状況にあわせて適切な時期でなければ交渉がうまく進まないことも考えられます。

「M&A」については、法務・財務・税務など様々な面から検討する必要がありますから、お気軽に弁護士にご相談ください。

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