民法改正案について(1)消滅時効

    近々、民法改正が行われて、いろいろなルールが変わるらしい!という話題を、ニュースでもちらほらと見かけますが、具体的に、どのようなルール変更が予定されているのでしょうか?今回の改正の目玉と言われる中心的な点について、少しご説明したいと思います。

 まず、数多く存在する法律の中でも、もっとも基本的で、私たちの生活と切っても切れない関係にあるのが、民法です。そして、現行の民法のうち、債権法分野と言われる部分には、契約に関するルールを中心に、我々の日常生活には欠かせない事項が定められています。

 しかし、この債権法分野については、明治時代に民法がつくられた時から大きな改正が行われていません。そのため、我々の生活と法律との間に、ズレが生じてきてしまっているのです。そこで、現代の実情に合ったルールに変更しよう、というのが、ざっくりとですが、今回の改正の趣旨と言えます。

 民法上、あなたが誰かに対して代金の返済や支払いを要求する権利(債権)を有している場合、これを相手に請求することができます。しかし、お金を貸したことを忘れていてずっと支払いを請求していなかったにもかかわらず、30年後にいきなり思いだして「あの時のお金を返して!」と言っても、特別の事情がない限り、これは認められません。なぜなら、あなたがもっていた債権は、10年間権利行使をしなかったことにより、消滅してしまうからです。これを、消滅時効といいます。

    もっとも、この消滅時効のルールには例外もあります。

    たとえば、企業間の取引といった商行為から生じた債権は5年で消滅します。

    また、職業別に短期消滅時効とされるものがあります。医師・助産師・薬剤師の診療代等は3年で時効にかかります。交通事故で怪我をさせられた場合の治療代等の、いわゆる不法行為によって生じた損害賠償債権も、3年で時効消滅します。

    また、労働者の給与債権や、商品の売掛金、学校や塾の授業料債権は2年で時効にかかります。

    ホテル・旅館や、飲食店の債権にいたっては、1年で消滅してしまいます。飲み屋のツケは1年でチャラだ!というのは、このことを言っているわけですね。

    この他にも、職業や債権の種類によって、細かく時効期間が定められているのです。

 そして、今回の改正では、このようにバラバラな短期消滅時効を廃止し、すべての債権について一律に、時効期間を定めることが予定されています。

 具体的には、ある債権について、権利を行使することができる時から10年間行使しない場合、そうでなくても、権利行使できると知ったにもかかわらず5年間行使しない場合には、そのような債権は時効によって消滅する、というルール変更が予定されているのです。

 通常の債権の場合、契約の時にいつが支払日かということは確認されますから、支払いを請求する人(債権者)は、「権利行使できる時」がいつであるかを「知って」いることになります。そのため、多くの場合、5年が消滅時効期間ということになるでしょうか。

 次回は、また別の改正点である「約款」に関する点について、ご説明していきたいと思います。

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