Q.経営している医院が厚生労働省の「個別指導」に続いて「監査」を受けました。保険医療機関の指定の「取消処分」を受けないよう、どのような対策をすればよいでしょうか?

A.厚生労働大臣は、一定の事由がある場合に、保健医療機関の指定・保険医の登録を取り消すことができます。通常、社会保険の給付についてのルールを周知徹底させるための「個別指導」・「監査」があり、その後に「取消処分」が行われます。

「取消処分」の前には、保健医療機関などが厚生労働大臣に対して意見を述べる「聴聞」が行われますから、この手続きに法律と行政手続に専門知識のある弁護士が説得的に議論を進めたりすることが考えられます。

「取消処分」の後、不服がある保険医療機関などは、厚生労働省の「社会保険審査官」に対して「審査請求」をし、その決定に不服があるときは「社会保険審査会」に対して「再審査請求」をするという2段階の不服申立ができます。

「審査請求」「再審査請求」によっても「取消処分」が維持される場合、裁判所に取消しを求める訴訟を提起することになります。

「取消処分」への対応は、医療機関・保険医によって異なった検討が必要ですし、早い段階で「取消処分」を防ぐに越したことはありませんから、「個別指導」・「監査」よりも前の段階から弁護士にお早めにご相談ください。

1 保険医・保険医療機関の「取消処分」とは

健康保険の対象となる医療の給付は、厚生労働大臣の指定を受けた病院・診療所(保険医療機関)、厚生労働大臣の登録を受けた医師・歯科医師(保険医)によるものでなければなりません。

厚生労働大臣は、一定の事由がある場合に、保健医療機関の指定・保険医の登録を取り消すことができます。この「取消処分」の要件として、「故意」又は「重大な過失」により不正又は不当な診療報酬の請求を行ったことなどが、厚生労働省の「監査要綱」に定められています。

保険医療機関・保険医が「取消処分」を受けると、保険者(全国健康保険協会など)に対して診療報酬を請求できなくなります。

通常、社会保険の給付についてのルールを周知徹底させるための「個別指導」、ルールが守られていない場合に行われる「監査」があり、その後に「取消処分」が行われます。

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2 「取消処分」の手続き

「取消処分」の前、保健医療機関などが厚生労働大臣に対して意見を述べる「聴聞」が行われます。

厚生労働大臣は「取消処分」について「地方社会保険医療協議会」に諮問し、「地方社会保険医療協議会」が審議して答申します。

「取消処分」が行われた後、不服がある保険医療機関などは、厚生労働省の「社会保険審査官」に対して「審査請求」をし、その決定に不服があるときは「社会保険審査会」に対して「再審査請求」をするという2段階の不服申立ができます

「審査請求」・「再審査請求」によっても「取消処分」が維持される場合、裁判所に取消しを求める訴訟を提起することになります。

3 「取消処分」への対策

「取消処分」への最初の対策としては、規則に則った診療や診療報酬の請求を行うことがあります。しかし、「保険医療機関及び保険医療養担当規則」といった行政機関の規則はわかりにくいものが多いため、処理のミスから不正な診療報酬請求と判断される場合もあり得ます。そこで、こうした規則について弁護士が事前に指導することが考えられます。

次に、「個別指導」・「監査」の段階から弁護士が同席したり、「取消処分」の前に行われる「聴聞」の手続きなどに法律と行政手続に専門知識のある弁護士が説得的に議論を進めたりすることが考えられます。

「取消処分」の要件である「故意」・「重大な過失」については法的な解釈の主張が必要となりますし、「取消処分」がいったん行われた後に保健医療機関などの担当者が行政庁の判断を覆すことは困難なことが多いといえます。こうしたことから、医療機関・施設の法務について専門知識のある弁護士が代理人として手続きに参加する方が有利といえます。

「取消処分」への具体的な対応は、医療機関・保険医によって異なった検討が必要ですし、早い段階で「取消処分」を防ぐに越したことはありませんから、「個別指導」・「監査」よりも前の段階から当事務所にお早めにご相談ください。